学科・専攻概要
「応用物理」とは、純粋な物理学とテクノロジーの橋渡しをする分野です。 なかでも本学科は全国的にも珍しい理学部に所属する応用物理学科として、(1)物理学ならびに物質科学の基礎と(2)工学や異分野へと応用する力 を兼ね備えた実力ある人材の育成しています。 我々は応用物理を "量子物理系"、"数理・統計物理系"、"先端デバイス物理系"の3分野として捉え,これらの専門的能力を養成します。
1~3年次には物理学の基礎科目である力学、電磁気学、熱力学、量子力学、統計力学、光物理、生物物理に加え、応用能力 を養成するため電子回路論、計測制御論、情報理論・コンピュータといった科目を履修します。 この際、理学部の学科として現象に関して体系的な学習を通じて普遍的な知識・能力を身につけます。
量子物理系, 数理・統計物理系, 先端デバイス物理系 の3分野が有機的に連携
量子物理系
現代物理の根幹となっている量子力学をベースに、物質内での電子の振る舞いやさまざまな物質の性質を理解する学問領域です。 高温超伝導のメカニズム、電子のスピンダイナミクス、量子液体の性質、光物理等について研究を行っています。
数理・統計物理系
さまざまな現象やシステムに対し、物理的・数学的モデルを構築することで、その挙動の裏に潜むメカニズムを明らかにしたり、振る舞いを予測したりする学問領域です。 神経細胞の集合体である脳の働き、広範な地殻変動である地震、物質の状態が一気に変わる相転移、人間や動物の集団挙動等の現象を研究しています。
先端デバイス物理系
物理現象を利用して、エネルギーの創成・貯蔵や情報の処理・記憶を行う新しいデバイスを創成する学問領域です。 半導体による光エネルギー変換、圧電体による振動・衝撃の電気への変換、強誘電体を使った情報記憶、イオン伝導体を使ったエネルギー貯蔵等について研究を行っています。
学科主任・専攻主任:宮川宣明 教授
教務幹事:住野豊 准教授
大学院幹事:齋藤智彦 教授
FD幹事:中嶋宇史 准教授
就職幹事:樋口透 准教授
実験幹事:岡村総一郎 教授
スタッフとしては,専任の教員として教授8名・准教授3名・講師3名・助教6名が所属しています。 加えて事務室・実験準備室のメンバーも加え,22名体制となっております。

教授

荒木修 , 伊藤哲明 , 岡村総一郎 , 木下健太郎 , 齋藤智彦 , 遠山貴巳 , 宮川宣明 , 宮島顕祐

准教授

住野豊 , 中嶋宇史 , 樋口透

講師

麻生尚文 , 加瀬直樹 , 山田庸公

助教

石垣賢卯 , 奥川亮 , 小内貴祥 , 鄭雨萌 , 宋俊東 , 余希

事務室

矢野章子

実験準備室

平井萌々香
東京物理学校から、戦後の新制東京理科大学へと替わったのは、初代学長本多光太郎先生の下、昭和23年9月22日であった。 そして、夜間部併設の理学部のみで発展してきた東京理科大学が第2代の学長、真島正市先生を昭和30年10月15日に迎え、東京大学で応用物理学科を設立し、応用物理学会をも創設して初代会長を務めた学長として本応用物理学科の設立に因を成すこととなった。
昭和33年3月25日に大学院理学研究科修士課程が認可され、野田の校地の購入などが進むと共に助成金による研究設備の充実も進み、その年から応用学科の設置認可申請が開始された。 年次計画により昭和34年に応用化学科、昭和35年1月20日に応用物理学科が認可され、昭和36年に応用数学科が認可された。 この時点で、理学部第1部第2部に3応用学科を加えて学生数4千余名の規模となった。
はじめは、物理計測を主とした応用物理学科は、昭和41年まで学長を務められた真島正市先生の伝統ある「階段教室での講義実験」をサポートし、理学に基礎をおいた応用物理教育を充実させてきた。 その後、学科での度重なる検討を元に材料、エレクトロニクス、情報という3分野にわたる教育をいち早く目標にかかげ、つねに教育の充実を図ってきた。特に情報教育は、学内のトップを切って電気工学科との共同作業でノートパソコンの出荷初期に学生に1台ずつ持たせた実務教育を開始し、今日の十分な常設パソコンによる教育に接続させた。
現在は、物理ならびに物質科学の基礎を体系的にしっかりと学び、それを応用する力を備えた人材の育成を目標にしており、基礎と応用のバランスの取れた学習を推奨している。
教育理念、教育目標に沿って編成された授業科目を履修し、所定の単位を修得することにより、以下の素養と実力を身に付けた人材に対して、卒業を認定し、学士(理学)の学位を授与する。
1.物理学及びその応用分野を含めた科学についての十分な基礎学力と高度な専門的知識。
2.現代社会における解決困難な様々な課題に対し、他者とコミュニケーションをとりながら、国際的な視野と科学的視点によって問題を解決し、イノベーションを創出するような応用力。
3.持続可能で豊かな社会の実現に取り組むため、人文科学や社会科学などの教養だけでなく、高い倫理観と豊かな人間性。
1.物理学及びその応用分野に対する確かな知識と、精緻な論理的・物理学的思考能力を身に付けて、物理学を先端科学・技術分野を中心とする広範な分野に応用して社会に貢献する、研究者・技術者・教育者等の人材を育成する教育課程を編成する。
2.伝統の「実力主義」を堅持し、物理学とその応用についての幅広く柔軟な教育研究課程を実践する。具体的には、基礎物理学および関連する基礎科学を基盤に、新たな物性を示す物質の解明・創成につながる教育研究(量子物理系)、複雑な現象に対する物理的・数理的な理解と応用につながる教育研究(数理統計物理系)、先端的デバイスの創成につながる教育研究(先端デバイス物理系)を実践する。 そのために、下記の教育を実施する。
3.高等学校までの教育課程と入学者選抜方法の多様化に配慮した上で、段階的な知識の習得を図るべく、1年次では、「力学」「電磁気学」「物理数学」等の、基盤的知識を獲得する「基礎科目」を中心に配置し、重要科目には演習を付して確実な理解を促す。さらに「基礎物理学実験」によって実践的な力を養う。
4.2年次及び3年次では、「量子力学」「統計力学」等の現代物理学の「基礎科目」や「固体物理学」「情報理論」「電子回路」等の、より高度な科目およびこれらに関連する「物理学実験」「応用物理学実験」を配置して、現代物理学と関連科学技術への理解を深める。
5.4年次では、主に「卒業研究」によって専門分野の理解を深めつつ研究活動の基礎を学ぶ。学問分野のニーズだけでなく人類社会への貢献を考えた学問の価値認識と発展を図る。また、幅広く関心ある科目を深く追求できるように、他学科・他学部・大学院開講科目の履修を可能とする。
6.広い意味で「物理を応用する」という職能の理解を促し、そのためのキャリア教育、倫理観を醸成する教養科目等を配置する。
7.英語教育においては、「一般科目」の英語科目に加え、「専門科目」に「科学英語」を配置し、実践的な英語力の養成を行う。
8.理科教員を養成するために、きめ細やかな教職課程を編成する。
1.高等学校段階までの幅広い学習内容を十分理解し、その中から、物理学とその社会への応用に特に興味を持って、大学においてさらなる深い理解を探求し、そこで獲得した能力を社会に役立てようと志す人
2.物理学とその応用分野への勉学・研究意欲を持ち、将来、国際的な視野を持って、国内外へ活躍の場を求めようと志す人
3.入学後に、物理学、数学及び外国語の研鑽にとどまらず、より広い教養を身に付けることに意欲的な人 を、多様な選抜方法により広く求める。
【入試形態ごとの入学者に求める能力と、その評価方法】
(A方式入学試験)幅広い科目に対する基礎知識と思考力、判断力を持つ人を、大学入試センター試験を用いて選抜する。
(B方式入学試験)学科の特性に見合う基礎知識とそれを応用する能力及び思考力、判断力を持つ人を、独自の学力試験(数学、物理、英語)の得点を用いて選抜する。
(C方式入学試験)理数系科目を中心に幅広い基礎知識と思考力、判断力を持つ人を、本学独自の学力試験(数学、理科)と大学入試センター試験の得点を用いて選抜する。
(推薦入学試験)高等学校段階までの基礎知識と思考力、判断力、表現力を持ち、自ら学ぶ意欲のある人を、書類審査、面接等により選抜する。
(帰国子女入学者選抜、外国人留学生入学試験)学問に対する姿勢や考え方、海外で身に付けた能力を持ち、自ら学ぶ意欲のある人を、大学入試センター試験の成績、資格・検定試験の成績、小論文、面接等により選抜する。
1. 修士課程においては、「理学の普及」と「実力主義」を実践できる研究者、教員または専門的技術者の養成を目標とし、所定の期間在学し、以下の知識・能力を身に付け、所定の単位を修得し、かつ修士の学位論文の審査に合格した学生に対して、修士(理学)の学位を授与する。
(1)物理学の基礎あるいはその応用分野において高度な専門的学識と研究能力を持つことで、その分野の諸問題を解決できる能力。
(2)物理学の重要性と応用の可能性を認識し、これを人間性豊かな教養と高い倫理観に基づいて社会に普及、教授できる能力。
(3)専門分野及び関連する分野における諸問題に対処することができるような、国際的な視点と対話能力。
2.博士後期課程においては、所定の単位を修得し、かつ博士の学位論文の審査に合格した学生に対して、博士(理学)の学位を授与する。
(1)高度で深い専門的知識と自立的研究能力を持つことで、その専門分野において自ら問題を発見あるいは設定し、これを独創的な研究能力によって解決し、イノベーションを創出しうるような能力。さらには、その専門分野における研究者や専門的職業人を指導する能力。
(2)物理学とその応用分野の成果を普及・教授できるとともに、科学・技術一般に対して客観的に評価できるような、高い倫理観に基づく総合的な視点とコミュニケーション能力。さらに、高度な専門的能力を持つ職業人としてリーダーシップを発揮し、新たな産業の芽を興すことに挑戦することや、持続可能な社会の構築に貢献する能力。
(3)専門分野及び関連する広い分野における国際的な課題に率先して対処することができるような、国際的な視点と対話能力。
1.修士課程においては、以下の方針で教育課程を編成する。
(1)高度な専門知識を身に付けるために必要な「基礎科目」、「総論科目」と専門分野に特化した「特論科目」を配置する。また、異分野の知見を自らの研究に応用できる能力を養うための「共通特別講義」も配置する。
(2)「教養科目」では、研究・開発に関わる人材として必要な基礎的知識、コミュニケーション能力、倫理観、および国際性を養う授業科目を配置する。
(3)「研究指導」では、研究能力を養うために必要な知識と経験を修得する。研究成果を会議等で発表することにより、客観的に評価し、表現する能力を身に付ける。指導教員の指導の下、2年間の研究成果を修士論文としてまとめることで、研究内容を分析・表現する能力を養う教育を行う。
2.博士後期課程においては、修士課程で養った高度な研究能力をさらに発展させ、物理学の基礎と、その応用に関   して自立した研究を遂行できる能力を養うように以下の方針で教育課程を編成する。
(1)「研究指導」では、国内外の学会等での発表、学術論文の発表によって、専門分野の研究成果を正確に表現する能力を養い、将来、国際的に活躍できる人材を育成する。指導教員の指導の下、3年間の研究成果を博士論文としてまとめ上げる過程で、研究内容を分析・評価・表現する能力を養う教育を行う。
(2)学際的な広い視野および深い学識を培うために、様々な専門の他機関の専門家によるオムニバス的な科目を配置し、異分野交流の機会を提供する。
物理学的視点に立脚してイノベーションを創出可能な学問を応用物理学と位置付け、社会的要請に応える教育・研究を実践することを趣旨とする。この趣旨のもと、
1.修士課程においては、学士課程で養った専門的基礎力と教養を身に付け、新しい物理学の応用分野を開拓する意欲があり、物理学の基礎とその応用に関する幅広い知識を備わった研究者・技術者・教育者を目指す人。
2.博士後期課程においては、修士課程で養った研究能力をもとに、基礎物理学や応用物理学の創造的研究を行い、より一層発展させる研究者となることを志す人、さらに、研究成果を社会に還元・貢献させる意欲のある人、国際的な視野を持って活躍しようという意欲のある人。 を以下の選抜方法により実施する。
【入試形態ごとの入学者に求める能力とその評価方法】
(一般入学試験)
物理学の基礎研究及び、先端的な応用に結びつけることができる能力に必要な物理学の知識、それらの理解度及び英語力を持つ人を、修士課程においては、書類審査、外国語の評価試験及び基礎学力の口頭試問によって選抜する。博士後期課程においては、書類審査、修士論文についての口頭試問等により選抜する。
(推薦入学試験)
修士課程において、物理学の専門知識、英語力、思考力及び表現力をもち、自ら研究を行う態度のある人を、書類審査、面接等により選抜する。
(社会人特別選抜、外国人留学生試験)
研究機関または企業等を経験した人、及び外国の大学で物理学の基礎を身に付けた人を、修士課程においては書類審査、外国語の評価試験及び基礎学力の口頭試問によって選抜、博士後期課程においては、書類審査、修士論文についての口頭試問等により選抜する。なお、社会人特別選抜は博士後期課程においてのみ実施する。