駄文創作のテーマ


1.考える習慣


直径2cmの石の中心部に直径1cmの球形の空洞を穴をあけずに作るにはどうしたらよいか?(答えはよく考えてから)


 大学の教壇に立って講義をしているときの学生諸君は実に物分かりがよろしい。試験も巧みにこなすし、その知識の豊富さたるや、感心してしまうほどである。しかし、研究室で実験を始めると、とたんに様子がおかしくなる。目の前でおきている現象を論理的に探究できなかったり、実験計画が立てられなかったりするのである。知識の宝箱から答えを持ってくることはできても、答えを与える知識を作り出すことはできないようなのである。どうやら学生たちは、大学に至るまでの過程で答えを導き出す筋道を考える作業をほとんど経験していないようである。答えが単に与えられることによって、知識だけが豊富に蓄積されたデータベース型人間が大量に生産されたというのが、我が国の教育環境が達成した一つの成果ともいえよう。豊富な知識の一方、理解度は浅い。既存手法には熟達するが、創造性に欠ける。これらはよい面も悪い面もあるが、日本人の大きな特色と指摘されている。この状況を敢えて「考える習慣」の欠如と呼びたい。
 考える習慣の欠如とその結果としてもたらされる社会現象はときに滑稽でもあり、駄文創作意欲がそそられる。さらに、読者に考えるよう仕向ける、そんな駄文が書ければ申し分ない。


2.多面性


白くて、黄色くて、透明で、硬くて、柔らかくて、丸くて、形がないものはな〜に? (答えはよく考えてから)


 原子力や放射能は、恐ろしい悪魔の兵器という人もいるが、貴重なエネルギー資源でもあるし、私が専門である分析化学の世界では欠かせないものでもある。石油にしても、エネルギー資源であると同時に、プラスチックや繊維などの炭素資源としての側面もある。消費税は絶対反対という人は多い。税金が増えるからであろうが、実はもっとも困るのは収入のない資産家である。直接税を強奪されている勤労世帯にとっては、間接税はむしろ望ましい税制である。ものごとを一面からしか見ないと、実像を捉えそこなう。一面の真理は一面だけの真理であって、必ずしも多面的な真理(そんなものがあればだが)ではない。どんなものごとにも多面性があるということを、まずは認識することが大切である。
 一面の真理と実像とのずれ、見る立場や見方による違いや矛盾する結論などをテーマとした駄文創作を心掛けている。その一方、一面の真理を突き詰めて考える作業も創作に欠かせない。なお、思い入れがあるため、「スワきち」の項では、多面性を取り敢えず無視している。


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