東京理科大学 理学部第一部化学科 築山研究室

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メンバー

Diffuse Interstellar Bands

Diffuse Interstellar Bands

  • スペクトルが、赤化している星の手前には、希薄な分子雲Diffuse Cloudが存在する。そのような星のスペクトルを、可視から近赤外の領域にかけて測定すると、Diffuse Cloudsの物質による吸収線が検出される。線幅の広い吸収線であるためDiffuse Interstellar Bands (以下DIBs)と呼ばれている(主にDiffuse Cloudsが起源であるが、星周雲や暗黒星雲との関連も指摘されている)。最初の発見は1922年[1]で、1934年に星間物質が起源であることが認識された[2]。現在までに600本程度(?)発見されている[3]。しかし、どのような原子もしくは分子の吸収線なのか、明らかになっていない。70年代初めまでは、ダスト中の金属酸化物(MgO, CaO)、気相の原子や小さい分子(Co2, Na2, CH4+, NH4など)、高励起状態のH2やH-の可能性が指摘され、最近ではC60+も指摘された。そして、今のところ、フラーレン類、多環芳香族化合物、直線炭素鎖分子、それらの中間物である非直線炭素鎖分子が有力候補と考えられている。

    [1] Heger M. L., 1922, Lick Obs. Bull. 10, 141.
    [2] Merrill P. W. 1934, PASP 46, 206.
    [3] Jenniskens P., Desert F. -X., 1994, A&AS 106, 39.

なぜ同定されないのか?

  • DIBsを同定するためには、まず実験室で分子を作る必要がある。その分子の電子遷移の周波数(波長)を精密に測り、スペクトルを解析し、それがどの分子なのか調べる必要がある。すると、その分子のDIBsとしてのスペクトルがシミュレーションできる。それと星間空間の観測で得られたDIBsスペクトルと比較する。ひとつの分子が作る複数の遷移で、周波数(波長)、スペクトルの輪郭、相対強度が一致すれば、DIBsをその分子と同定できる。
    可視〜赤外の領域では、様々な分光法が開発されている。しかし、DIBsの起源となっている分子を分光装置のセルの中で作ることが難しいため、それらは未だ同定されていない。生成方法自身は、おそらく既存の方法で可能だと考えられるが、生成装置に入れる材料やその生成条件の組み合わせは無限にある。我々がDIBsの起源の分子を正しく予想できれば、解明できるだろう。(荒木の私見)

言葉の意味

  • 「Diffuse interstellar bands (DIBs)」とは、直訳すれば「ぼやけた星間線」である。「星間未同定吸収線」と意訳すると、現状に即している。Diffuse Interstellar Bands とDiffuse Cloudは,どちらもdiffuseという形容詞を冠しているが、意味はまるで違う。DIBsの線幅は、狭くても0.1 nm程度あり、太ければ2 nmを超えるので、Diffuse Interstellar BandsのDiffuseはスペクトルが周波数的に「ぼやけている」ことを表している。Diffuse CloudのDiffuseは雲の密度が「拡散して薄くなっている」ことを意味する。Diffuse Cloudの分子の密度は10−102 cm-3 位で、暗黒星雲よりも低い密度である。ちなみに、その温度は50−100 Kくらいであるため、10 Kくらいの温度である暗黒星雲よりも暖かい。紫外線が多く通過しているため、そこにある分子は紫外線で壊れにくい性質を持っている必要がある。

DIBsラインサーベー

  • The Diffuse interstellar bands. VI. new features near 6800A
    G. H. Herbig, ApJ, 331, 999, 1988.

    New diffuse interstellar bands in the wavelength resion 6500-8900A
    F. Sanner et al., ApJ, 226, 460, 1978.

    The diffuse interstellar bands. IV. the region 4400-6850A
    G. H. Herbig, ApJ, 196, 129, 1975.

    Interstellar abundances from absorption-line observations with the Hubble space telescope
    B. D. Savage and K. R. Sembach, Annu. Rev. Astron. Astrophys., 34, 279, 1996.
    H2, OH, CO and HCl were observed in the UV region.

    The diffuse interstellar bands. VIII. new features between 6000 and 8650A
    G. H. Herbig and K. D. Leka, ApJ, 382, 193, 1991.

    A survey of diffuse interstellar bands (3800-8680A)
    P. Jenniskens ande F.-X. Desert, A&A Suppl. Ser., 106, 39, 1994.
    新たに64本のDIBを検出している。広い波長域にわたり報告されていて、これまでのデータを総括する論文である。

    Near-infrared absorption spectroscopy of interstellar hydrocarbon grains
    Y. J. Pendleton et al., ApJ, 437, 683, 1994.
    The 3050cm-1 line is PAHs, and aromatic material is expected.

    A deep echelle survey and new analysis of diffuse interstellar bands
    S. O. Tuairisg et al., A&AS, 142, 225, 2000.
    3906-6812 A の領域で再探査を行い新たに60本のDIBを検出した。

DIBs Database