東京理科大学 理学部第一部化学科 築山研究室

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高励起状態における誘導放射ダイナミクスの研究


分子の高励起状態からの緩和過程には、大きく分けてイオン化、解離、衝突などの無放射過程と発光の過程が存在する。一般に高励起状態からの発光による緩和過程としては、蛍光と燐光が知られているが、蛍光の特殊なケースである自然放射増幅光(Amplified Spontaneous Emission: ASE)と呼ばれる過程も存在する。このASEとは、レーザー光によって反転分布を形成した媒質からの自然放射光が、媒質自身の誘導放射過程によって増幅された光のことである。築山研究室では、ASEを蛍光・燐光に次ぐ第三の「励起状態からの発光信号」と認識し、一酸化窒素分子やハロゲン分子、キセノン原子などの励起状態緩和ダイナミクスを研究している。

近年では、黒体放射誘起の緩和過程に関する研究も行なっている。高Rydberg状態にある原子は、黒体放射によって高Rydberg状態間遷移を起こすことが知られているが、分子系における観測は報告されていない。我々は、一酸化窒素の高Rydberg状態からの発光を観測することで、黒体放射誘起の誘導放射による緩和過程と、黒体放射の吸収によるRydberg状態間の遷移について研究している。