3年生春休み自由研究

テレビゲームを用いた
認知症(痴呆)の症状改善の試み


渡辺謙仁(東京理科大・物理)


はじめに
 近年、テレビゲームが脳機能低下を引き起こす可能性、いわゆる「ゲーム脳」が問題化している。しかし世の中には何事にも良い面と悪い面があることから、私は良い「ゲーム脳」もあるのではないかと考えた。つまり、テレビゲームが脳機能の向上に役立つ場合もあるかも知れないと言う事である。私は今回、某n社の音楽ゲームTが脳機能を向上させ、認知症の症状改善に役立つかどうかを研究した。

目的
 単語記憶テストを用いて、某n社の音楽ゲームT(以下、ゲームT)が脳機能を向上させるかどうかを評価する。

方法
 実験には58〜86歳の男女計6人の被験者に御協力頂いた。被験者がゲームTを15分間行った前後で、被験者に単語記憶テストを実施した。対照実験として、同じ被験者に15分間安静にしてもらった前後でも単語記憶テストを実施した。ここで言う単語記憶テストとは、3文字のひらがなからなる単語30語を最初の2分間で可能な限り多く憶え、次の2分間で可能な限り多く思い出して書き出すというものである。1人の被験者が計4回単語記憶テストを受ける事になるが、全ての回で異なる単語を用いてテストを実施した。

結果
 単語記憶テストの結果はFig. 1の様になった。


Fig. 1 単語記憶テストの平均点の変化

考察
 Fig. 1の右、ゲームTを行った場合を見てみる。ゲームTを行った前後の点数が互いの誤差範囲内に入っているので、ゲームTを行って点数が上がったとは言えない。Fig. 1の左の安静にした場合と比較してみても、ゲームT後よりも安静後の方がむしろ点数が高いくらいである。

結論
 単語記憶テストでは、ゲームTが脳機能の向上に効果があるかどうかを評価できない。

おわりに
 今回の研究は、ゲームTの効果は単語記憶テストで評価できない事を確認するに終わってしまった。fMRIや光Topography等の装置を用いれば単語記憶テストの点数には表れない、微小変化を捉えられるのかもしれないが、専門外の学生が春休みの自由研究に実験装置として用いるのは不可能である。もしかしたら被験者数が6人と少ない事が単語記憶テストで評価できない原因で、被験者数を増やせば評価できるのかもしれないし、数ヶ月間ゲームTを続ければ単語記憶テストの点数にも表れるくらいの大きな変化もあるのかもしれないが、いずれにせよ一人の学生が春休みという短期間に行うには難しい。最後になるが、私の研究に御協力頂いた6人の被験者の皆様に感謝する。




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