研究テーマ


(1)金属材料の粘塑性・ひずみ時効特性を考慮した非弾性構成方程式に関する研究
   Study on inelastic constitutive equations based on viscoplastic and strain ageing properties of metals

 金属材料の塑性流動応力はひずみ速度依存性を有することはよく知られており、これを粘性効果として従来より研究されているが、例えば、ひずみ速度が大きいほど流動応力が低い場合も観察されており、さらに流動応力がひずみ速度の影響を受けない場合でもリラクセーション特性がひずみ速度依存性を示すなど、統一的な粘性特性を説明する理論は目下のところ存在しない。本研究では、ひずみ時効による流動応力の変動について実験的に調べ、このひずみ速度依存性を明らかにし、従来の粘性のみを考慮した過応力構成モデルにひずみ時効効果を組み入れた2因子構成モデルを構築して、金属材料の塑性、クリープ、リラクセーション等の様々な非弾性変形特性を統一的に説明することに成功している。
 現在、繰り返し変形を伴う場合や高温および二軸応力下における様々な材料の粘塑性・ひずみ時効特性について実験的および理論的な検討を進めている。

(2)高分子材料の粘弾塑性構成方程式に関する研究
   Study on Viscoelasto-plastic constitutive equations of polymers
 ポリプロピレンなどの工業上重要な高分子材料の構造材としての適用性について検討するために、繰り返し負荷を受ける場合や高温下における変形特性のひずみ速度依存性を実験的および理論的に明らかにすることを目的としている。また、結晶化度や球晶の大きさなどを内部組織・構造と変形強度特性との関連性についても検討を行い、内部組織を考慮した結晶性高分子材料の一般構成方程式の構築を目指している。

(3)高温機器用材料のラチェット変形特性に関する研究
   Study on Ratcheting properties of metals at elevated temperature
 ラチェット変形に代表される多軸応力下での繰り返し変形を伴う複雑な非弾性変形挙動については、高温で使用される原子炉などの圧力容器の強度安定性の確認や建設コスト削減のために、こうした負荷に伴う累積ひずみなどを正確に予測する必要がある。本研究では、複雑な変形による材料の降伏局面の変化を連続的に調べることができる精密な実験システムの構築を行い、こうした複雑な材料挙動の本質に迫れる本質に迫る研究を目指している。

(4)溶射皮膜の強度および皮膜と母材との接合強度評価法に関する研究
   Study on evaluations of sprayed film strength and of bond strength between film and substrate
 表面改質技術として溶射方の進歩はめざましいが、より強固な皮膜となればその強度を評価することが技術的に困難となって、溶射法を重要な聞きに適用する際の強度設計を精度良く行うことができない。本研究では、ピンテスト法および円筒突き合わせ試料による引っ張り接合強度、せん断接合強度あるいはそれらの組合せ負荷強度を実験的に測定評価する方法の開発、応力特異性の影響を除去して真の接合強度を解析を利用して求める方法の開発を行っている。

(5)接着接合強度則に関する研究
   Study on strength criteria bonding
 最近の接着剤の進歩はめざましいものがあり、構造物に単独で使用される可能性も見えている。しかし、強度設計を精度良く行うためには接着強度を引っ張りとせん断応力の組合せ応力下で精度よく調べ、強度則として方程式化する必要がある。本研究では、突き合わせ円筒試験片により、接着強度に及ぼす負荷速度、負荷方向、接着層厚さなどの影響を実験的および理論的に検討しており、接着端部の形状に由来する応力得意場の影響についても考慮に入れた強度評価も行っている。

(6)薄膜のX線的および機械的弾性定数の評価と残留応力評価に関する研究(米谷教授担当)
   Study on elastic constants of coating films by both a mechanical and physical methods
 溶射皮膜やセラミック蒸着皮膜の強度を評価するうえで、皮膜に存在する残留応力を正しく知ることが重要である。しかし、これを簡便に測定することは簡単ではない。もしX線回折法によって正しく知ることができれば益は大きい。本報告では、X線的および機械的弾性係数定数をそれぞれ測定し比較検討することによってX線回折法による結果の信頼性とその意味・組織構造との関連について検討する。

(7)塑性加工における潤滑状態に関する研究(辻邦夫講師および連携大学院方式による、理化学研究所池浩客員教授担当)
   Study on lubricating state at plastic processing
 例えば、圧延においてオイルピットの発生条件を明らかにし、良好な表面性状を得るための圧延条件を様々な場合について理論的に予測することができれば工業上の価値は計り知れない。本研究では、混合潤滑における流体潤滑の荷重分担比(面積分担比)とゾンマーフェルト数との関係の検討、潤滑油粘度の温度・圧力依存性を考慮した潤滑状態の理論的・実験的検討を行う。

(8)セラミック蒸着薄膜の高温接合強度に関する研究
   Study on thermal fatigue bond strength of PVD ceramic coating film
 核融合炉第一壁は強力な中性子放射を受けるため、例えば、ステンレス鋼にセラミックをコーティングした材料を用いることが検討されている。この場合、炉の運転が断続的に行われると周期的な熱応力の負荷によって皮膜が剥がれる危険性がある。こうした状況を模擬した実験を行うとともに、有限要素法による解析によって熱応力を低下させる炉壁の最適形状について検討する。

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