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由井研の具体的な研究テーマ

 時間的・空間的に限定された強電場や高温・高圧にさらされた極限反応場の化学反応を追跡するためには、高時間分解計測・高空間分解計測が可能な装置の開発が求められます。また、通常極限反応場でしか起こり得ない触媒反応や電気化学反応を常温・常圧下で実現可能な表面・界面は、ユニークな物性や分子構造を有しており、この物性の発現機構や分子起源の理解が求められています。そこで当研究室では、オリジナルのレーザー計測装置を開発することで、このような時間的・空間的に制限された極限環境の反応場の化学情報や、表面・界面といった局所領域での物性や分子構造情報の取得を目指しています。


1.溶液中プラズマ反応場動態の顕微観測と、ラマン散乱・近赤外吸収分光法への展開

 溶液中でプラズマを形成すると、高温、強電場、急冷効果といった極限環境が生み出されることから、近年では強力な化学反応場を形成する手法として材料合成・環境浄化・医療機器等の分野で注目されています。しかし、反応場がミクロ空間でかつ不均一であることや、反応活性種が短寿命であることから、反応場の化学状態の理解が遅れています。我々は、顕微鏡下でミクロな反応場を拡大して観測し、時間分解発光分光、ラマン散乱分光・過渡吸収分光法などをくみあわせ、 カーボン系や金属系の触媒合成、環境中の難分解性の有機物の分解反応の計測を通じてこの新しい反応場の理解・制御を目指します。様々なプラズマの生成法(レーザー誘起、電極間放電、誘導結合型)と水溶液界面の研究を行っています。レーザー誘起プラズマでは、電子による異常なラマン増強現象が見出されるなどユニークな光学特性が見出されており、分析化学への応用を進めています。また電極間放電では、反応場分光解析に基づく合金ナノ粒子の新しい合成反応場などへの応用も進んでいます。


2.環境制御顕微光学セルの開発と顕微ラマン分光計測への展開

 脂質やタンパク質、氷のような分子集合体は水中で様々な形態を示します。このような集合体のつくる表面・界面やナノスペースでは、分子はバルク中とは異なる構造や物性を示すことが知られています。しかし、通常の分光計測では、このような微小領域での分子情報はバルクの情報に埋もれてしまいます。そこで我々は、集合体形成環境を制御できる光学セルとナノ~マイクロメートルサイズの空間分解能を有する顕微ラマン分光装置を組み合わせることで、脂質集合体や氷結晶の表面・界面に存在する分子の構造や分子間相互作用様式を明らかにしていきます。


3.誘導ラマン散乱干渉計の開発と分子識別光コヒーレントトモグラフィ(OCT)への展開

誘導ラマン散乱

 光の干渉を利用しているOCTは、目の網膜や多層薄膜材料の断層画像を得ることができる3次元立体/断層画像計測法です。マイクロメートルの空間分解能の持ち、非破壊で試料内部を観察することができます。しかし、これまで形状しか見ることができず、分子の情報を取得できませんでした。本研究では、従来のレイリー散乱光ではなく誘導ラマン散乱光を用いたOCTを構築し、世界初の分子識別的光干渉画像計測の実現を目的としています。また、開発装置の応用として、医療分野に向けた生体深部を計測する技術や、材料分析分野に向けた表面凹凸を計測する技術の開発も行なっています。


4.近赤外レーザー誘起表面変位顕微鏡の開発と顕微ラマン分光計測への展開

 物質表面・界面のかたさ・柔らかさといった力学物性は、材料や生体の構造を理解する上で重要な情報です。特に、細胞表面の力学物性は生命機能や発生に重要でありながら、未だ系統立てて解明されていない新分野です。我々は、レーザー光を用いて媒質界面を周期的に変形させることで、非破壊・非接触で細胞1個の動的粘弾性を計測可能なレーザー誘起表面変位顕微鏡を開発し、更にラマン分光計測と組み合わせる事で、細胞1個での界面の粘弾性とその分子起源に迫ります。



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