物理学科教員からの推薦図書を紹介します。

本を読んでいますか?

理科大には素晴らしい図書館があります。授業を理解するために、図書館で自分に合った参考書を探していますか?

大学に入学したとき、大学の図書館に入ってその蔵書に圧倒されたのを覚えています。自分は何も知らなかったことに気づき、目の前に学ぶべきことが果てしなくあることに焦ったものでした。しかし、物理を4年間学んでみたら、それは杞憂だったとわかりました。つまり、たいていの分野は、必要になったときに本さえ読めば独学で勉強できるようになっていたからです。なぜでしょうか。物理で学ぶ数学は主に19世紀までに完成されたものですが、ほとんどの自然科学を記述する数学として十分です。その数学を基礎にして、あらゆる自然現象を貫く原理と法則を理解し、それを実際に適用する力が身についているからです。物理学科の基幹科目をしっかり学べば自然にそういう実力がつきます。

技術革新の激しい今日、研究者・技術者になれば常に新しい科学・技術分野で成果を出すことを求められます。その度に、その分野の勉強を一からしなければなりません。このときに、最も適応力が高いのは物理学科出身者と言われています。物理学科で物理を4年間学んだ者は、上に述べた理由で、およそ世の中にあるあらゆる科学・技術の書物(最先端の現代数学は除く?)を読んで理解することができるからです。これは物理を学んだ者だけの特権です。しかし、学生時代に怠けていて基礎ができていないと、その限りではありません。基礎学力をつけるのにもっともよい方法は、演習問題を解くことだけでなく、しっかり書かれた教科書を通読することです。これは、大学を出てからも、新しい分野を身につける必要に迫られるたびに行うことです。

我々が学生時代には授業アンケートはなく、授業がわからないときは自分で解決しなければなりませんでした。そういうときに採る方法は、先人が残したよい教科書を見つけ、丸ごと1冊勉強することでした。むしろ、授業だけ・授業で指定された教科書だけではわからないのが普通で、常に自分に合った参考書や演習書を探していたといえます。幸いにも、湯川・朝永が学生時代であった頃と比べて、日本語のよい教科書は充実しています。海外の定評のある教科書はほとんど翻訳されています。これは日本の科学技術を語る上での強みの一つです(日本語で勉強できてしまうので、英語力が向上しない、というデメリットもありますが)。この環境を活用しないのは損です。ぜひ1冊の物理の教科書を通読する体験を、学生時代にできるだけたくさん積んでください。特に、授業に追われない夏・冬・春休みはじっくりと1冊の本に取り組むチャンスです。物理の教科書の場合、理解しながら進んでいこうと思えば、普通の本のようには速く読めません。自分のペースで読み進めてください。どうしてもわからないところは、そのままにして先に進みます。1冊を通読してすべてを理解できなくてもかまいません。そのときに分からなくても、時間がたって読めば理解できる場合が往々にしてあります(実際、多くの教員は、学生時代わからなかったことが、授業を持つためにもう一度勉強し直して初めてわかった、という経験をしています)。こうして通読した本は、一生使える宝になります。(難しい教科書の場合、お薦めなのは、何人かでグループを作って、担当する部分を分けて、輪講することです。この形式は卒業研究で教員の指導のもと実際に行いますが、我々の学生時代は、大学院生はもちろんですが、学部生でも自主的に行っていたものです。近年、大学院生ですら、自主輪講する姿がほとんど見られなくなったのは残念なことです。)

そうした参考書選びのガイドになるように、物理学科教員の推薦図書を紹介します。必ずしも授業の指定教科書や参考書には挙げられていないが、教員自身が学生時代に勉強して役に立ったものや、授業で密かに参考にしていたりする定評のある本なので、買って損をしないことは保証できます。ただしいくつかの本はレベルが高いので、図書館等で内容を確認してから購入を検討したほうがよいものもあります。個々の本が誰の推薦か(複数の教員からの推薦書も多いです)は伏せておきます。教員自身は英語で勉強した場合も、ほとんど日本語で手にはいるので、英語の教科書をわざわざ挙げてはいませんが、英語が得意ならば原書に挑戦してみるのもよいと思います。できるだけ学部学生向きで一般性が高いものを推薦しています。後半の啓蒙書は、それほどハードルは高くないと思うので、普段の読書の参考にしてほしいと思います。

物理学科教員一同

参考:学生への配信文-------------------------------------
物理学科学生へ: 皆さんの勉強の参考になるように、教員一同からの推薦図書を紹介します。
http://www.rs.kagu.tus.ac.jp/phmanage/page54/page54.html
教員が皆さんにお薦めしたいのは、自分に合った適当な教科書を見つけて、丸ごと1冊を通読することです。 教員の学生時代はこれは普通の勉強方法でした。最近の学生は、授業でわからなかったときに必要なところだけを拾い読みするのみで、1冊の教科書を通読することはあまりないようです。授業が懇切丁寧になったことがその理由の一つかもしれません。しかしここには落とし穴があります。授業では、限られた時間で教えられる範囲しか扱うことができません。また、難しいところは扱わず、学生が理解できるレベルまで下りていく努力をしばしばしています。1冊の教科書に書かれているすべてを授業に盛り込むことはできません。 日本には翻訳書を含めてすばらしい物理の教科書がいっぱいあります。実際、教員の学生時代には、基幹科目すら授業に出ずに教科書や演習書だけで独学して、一流の理論家になった豪の者もいます。よい教科書を手にとって、1冊まるごと勉強することは、確実に物理の基礎力を養います。その体験があれば、将来どんな分野に進んでも、丸ごと1冊その分野の教科書を読めば対応できる、という自信がつきます。 定期試験が終われば夏休みです。夏休みは、1冊の物理の教科書をじっくりと読むためのチャンスです。ぜひ挑戦してみてください。また、数式があまり出てこないがためになる啓蒙書もたくさん紹介しています。普段の読書にお薦めします。


教科書---------------------------------------------------
ファインマン物理学

構成 全5

ファインマン,レイトン,サンズ

内容紹介:物理学の素晴しさを伝えることを目的になされたカリフォルニア工科大学12年生向けの物理学入門講義.読者に対する話しかけがあり,リズムと流れがある大変個性的な教科書である.物理学徒必読の名著.

学生時代は読まなかったが、教える立場になって読んでみるととても参考になる。理科大図書館でいつも全巻そろっていてあまり借りられていないようなのはもったいない。

ランダウ・リフシッツ 理論物理学教程 

通読するのは困難だが、研究で問題にぶつかったときに読むとヒントがいっぱい詰まっている本。学位論文で実験結果の定式化で悩んでいるとき、電磁気学の応答論のところを熟読し、解決の道しるべになった。世界的地球物理学者の竹内均が、ランダウの流体力学(この翻訳者)がいつもアイデアの源泉になっていると語っている。

力学-------------

VDバーガー,MGオルソン 「力学-新しい視点にたって」  培風館

学部1年のときに通読して、自分にとっての大学の物理学の入門書となった思い出深い本。惑星による宇宙船の加速(スイングバイ)や人工衛星逆説、ビリヤードやテニスラケットの定理など、身近で興味がわく話題を軸に、きちんと数学的な力学を手ほどきしてくれる。特にこまの運動など、剛体の3次元運動について勉強するのに最適の本と思う。難解な逆立ちごままで解説してあるのもうれしい。翻訳が力学1の教科書の著者の戸田盛和であるのもよいのではないでしょうか。授業でずいぶん参考にさせてもらった。

クセのある力学の問題がたくさんあって面白かった思い出があります.

 

ランダウ・リフシッツ「力学」 解析力学が終わったくらいの課題として適当


ランダウ・リフシッツ 物理学小教程  上記の理論物理学大教程は荷が重くても、これなら手にとってみる気になるのではないでしょうか。文庫本で出ているようなので、ぜひ挑戦してみてください。

「振動と波」 長岡洋介 裳華房
「振動論」 戸田盛和 培風館
横断的・発展的内容で,時間の余ったときに読むにはいいかもしれません.

相対論-----------------------

テイラー、ホイーラー 時空の物理学 相対性理論への招待

学生時代、特殊相対論はこれで勉強した。ブルーバックスの次の段階として読めるが、特殊相対論力学までならこの本だけで十分と言える。重要な概念である、ローレンツ変換不変性と固有時間、相対論的力学から導かれるエネルギーと質量の等価性などを無理なく理解できたと記憶している。多くの問題とその解答がつき、有名なパラドックスを網羅している。ただし電磁気学については省かれ、一般相対論についてはさわりだけである。


電磁気学-------------------

砂川重信「理論電磁気学」

私が今まで読んだ本の中で最も役に立った本なので全くの自己満足で推薦します。

学部1年のとき、電磁気学の授業で教科書(参考書?)に指定され、当時大枚3200円を払って買った本ですが、難しくてあまり利用しなかった記憶があります。それでも随所にある記述(群速度や光の分散)は役にたったと思います。電磁気学を一通り勉強してから、理論的背景を系統的に整理するために読むと役に立つ本で、自分が授業をするときにも参考にしています。

加藤正昭 演習電磁気学 サイエンス社

学生時代、電磁気学はこの著者の授業で、この演習書で勉強しました。加藤先生の授業は私が学生時代に受けた中でベストのもので、板書のベクトル表記が流麗だったのがとても印象に残っています。まねしたいと思うが到底及びません。

バーガー・オルソン 電磁気学I,II
静電場の問題、物質中の電場・磁場、マックスウェル方程式、そしてマックスウェル方程式から特殊相対論、とコンパクトにまとまった良書と思います。アンテナや導波管といった実用的な問題から、虹や夕焼けといった自然現象についての解説、演習問題も多いです。また、大統一理論での磁気単極子など、比較的新しい話題も随所にあって楽しいです。

ファインマン「電磁気学」

初学者が相対論と電磁気学の関係について学ぶのに最適の本の一つだと思う(パーセルの電磁気も好適書でしょう)。砂川重信の理論電磁気学でもそこは詳しく記述されているが、初学者には難解すぎる(深く勉強するのには良い本)。私の学生時代の授業では、教官が電磁場テンソルを書き連ねていたのを覚えているがさっぱりわからなかった。学生時代にこれらのいい本を知っていれば、と思う。

量子力学-------------------
朝永 量子力学1

内容紹介:1949年に出版された『量子力学』は、日本語で書かれた量子力学の教科書の定番として長年読み継がれている。1当時の物理学者がどのような問題意識をもち、どのように考えて量子力学という学問を作っていったかが書かれてある。著者序文:「本書はあまり急がないで量子論を勉強しようとする初学者のために書かれた・・・できあがった量子力学を読者に紹介するよりも、むしろそれがいかにして作られたかを示そうと努めた。・・・理論物理学者の仕事にはできあがった理論を問題に応用することと新しい理論を作り上げることの2つがある・・・後者のために量子力学の出来上がる経験は最も教訓的である。なぜなら、ここではいろいろな型の学者がいろいろな思考方法を用いて、自然から提出された謎を解いていく道が最も豊富に示されているからである。」

量子1Aが終わった後の課題として適当

私の学生時代も定番の一つでしたが泥臭いという評判もあり、通読することはありませんでしたが、教える立場になると必携の書と思ったので購入しています。例えばp.34の図11を見れば、高温になるほど赤から青に黒体輻射のピークが短波長にシフトしていく理由を明快に説明してあり、すばらしい教科書であることがわかります。何名かの物理学科教員の学生時代、理科大の量子力学の授業で夏休みの宿題としてこの第1巻の通読が課され、とても役に立ったそうです。

ディラック「量子力学」 
教科書としては薦められないですが、量子力学がかなり分かってきた(と自分では思っている)段階で読ませたい

ランダウ・リフシッツ 量子力学
独特の視点があって面白いです。

サクライ 現代の量子力学
比較的読みやすく、量子力学の概念の習得に適した良書だと思います。

小出昭一郎「量子力学TU

初学者用としてわかりやすい。

最近、交換相互作用とスピン軌道相互作用がある中で磁場を印加したときにどのように状態が混ざるか、基礎的な評価をしようと思ってわかりやすい教科書を図書館で探したらこの本に行き当たりました。学生時代に手にとっておくべきだったと思いました。

猪木 慶治 , 川合  量子力学 1,2

内容紹介:精選された問題を通して理解できる学部学生向け教科書。前期量子論を簡略化し解析力学の基礎を省略する一方、より現代的な構成をめざした。各章に適切な例題と演習問題を付し、読者が自習できるように工夫した。豊富な講義経験と議論の中から生まれたわかりやすい量子力学。理解を深める精選された例題と一歩進んだ章末問題、詳しい解答解説つき。概念の解説と問題演習をひとつにまとめた入門書。

理科大生がよく買って持っている本で、書評での評判もよいようです。私は学部では猪木先生から量子力学を習いましたが、確かにわかりやすい講義だったと思います。当時はメシアかシッフの量子力学が標準的教科書として挙げられていました。

清水明 新版 量子論の基礎

内容紹介:本書は、量子論の基礎と本質をきちんと、しかし易しく解説した新しい量子論の教科書。通常の量子論の入門書とは全く逆に、普遍的で一般的な基本原理かから始めて、それを具体化し、個々のケースへの応用例に向かうという、いわば川上から川下へ向かう方向で解説していく。これにより、一般の量子論の中で自分が今どこを学んでいるかを常に把握しながら学べるし、先に進むたびに知識を修正する必要もなくなる。そして、易しく丁寧に解説をしたので、このような川上から始める書き方をしたにもかかわらず、全くの初心者や、高校で物理をやらなかった学生でも読める教科書になっている。

教える立場になったとき、自分の量子力学の基礎の理解に誤解があるとまずいので、整理の意味で購入して読んだ。

熱力学・統計力学------------------

"Thermodynamics" Enrico Fermi Dover Publications
英語で読む専門書の入門として良いと思います.内容はもちろん良いですが,何より安いです.(10$くらい)

久保亮五編 大学演習 熱学・統計力学 この教科書に載っていない新しい演習問題を考えるのは困難と言われる、海外でも有名な演習書。私はこの演習書を活用した部類ではないが、私の友人は学部時代統計力学の講義にほとんど出ずこの演習書で勉強し、いまや統計力学の理論家になっている。

数学---------------------------
高木貞治 解析概論 岩波書店 長く読み継がれている、日本が世界に誇る大数学者の教科書。学部時代、複素関数論をこれで勉強して、役に立ったという思い出がある(問題を解く技術というより、そのエッセンスがわかったような)。最近講義の参考にならないかと思って久しぶりに開いてみると、講義に役に立つ内容が見つかり(自分にとっても知らなかったことでした)、さっそく講義に使用させてもらった。

"ベクトル解析30講" 志賀 浩二 朝倉書店
物理数学で学ぶ内容に比べかなり抽象的(テンソル代数,外積代数,微分形式等)なのですべての学生に受け入れられるとは思いませんが,個人的に大好きな本です.

物性論-------------------

霜田・桜井 エレクトロニクスの基礎 電子回路の教科書の定番で、研究者・技術者を目指すなら持っていれば必ず役に立つ。

Cox
固体の電子構造と化学  化学者向きに書かれているので、平易で理解しやすく、物性論を別の視点(化学結合)から勉強できる。物性論を受講したあとに読んでも、物性論を受講しないまま読んでもためになると思います。


櫛田孝司 光物性物理学 朝倉書店 光物性専門家も一生役に立つ教科書。コンパクトな本であるのにも関わらず基礎から発展的な内容までよく整理され、必要なことはほとんど網羅していながら、事典的な項目の羅列に堕していない。内容の説明は十分になされ(簡潔で無駄がなく的を射ている)、ほとんどの式について前提となる式がきちんと配置されていて、導出過程が追えるように配慮されている。ただし修士学生でも読みこなすのは大変なようである。光物性の専門外の人がこの分野の常識を身につけたいときも、まず手に取るべき本である。洋書でもこれほどバランスのとれた本は見当たらない。

 

光学----------------

小林浩一 光の物理 光はなぜ屈折、反射、散乱するのか 東大出版会

ロッシ 光学 
吉岡書店 学部3年のころ通読し、波動光学はこれで身につけた。光の速度が物質中で遅くなる理由の説明に感動した覚えがある。

 

啓蒙書、1年生でも可------------------------------------

朝永振一郎「物理学とは何だろうか」(上・下)

内容紹介:(上)現代文明を築きあげた基礎科学の一つである物理学という学問は、いつ、だれが、どのようにして考え出したものであろうか。十六世紀から現代まで、すぐれた頭脳の中に芽生えた物理学的思考の原型を探り、その曲折と飛躍のみちすじを明らかにしようとする。本巻では、ケプラーから産業革命期における熱学の完成までを取り上げる。

(下)本書の完成を前に著者は逝去された。遺稿となった本論に加え、本書の原型である講演「科学と文明」を収める。上巻を承けて、近代原子論の成立から、分子運動をめぐる理論の発展をたどり二十世紀の入口にまで至る。さらに講演では、現代の科学批判のなかで、物理学の占める位置と進むべき方向を説得的に論じる。

この本のすばらしさは、アマゾンのカスタマーレビューからも一目瞭然です。

朝永振一郎「量子力学と私」(滞独日記なども収録)
研究者の日常や研究のプロセスについてイメージが沸くのではないだろうかと思いました。

 

朝永振一郎 鏡の中の物理学  講談社学術文庫 31

内容紹介:ノーベル物理学賞に輝く著者がユーモアをまじえながら平明な文章で説く、科学入門の名篇「鏡のなかの物理学」「素粒子は粒子であるか」「光子の裁判」を収録。“鏡のなかの世界と現実の世界との関係”という日常的な現象をとおして、最も基本的な自然法則や科学することの意義が語られる。また量子的粒子「波乃(なみの)光子」を被告とした裁判劇は、わかりやすく量子力学の本質を解き明したノン・フィクションの傑作として、読者に深い感銘を与える。

 

湯川秀樹 物理講義

内容紹介:ニュートンから現代素粒子論まで、物理の世界はいかに創られてきたか。湯川博士は、若い人々のために随所で自分の学生時代の経験に触れながら、わかりやすい言葉で、物理学の発展の歴史を数多くの創造的天才たちの人間像にまで結びつけて述べている。本書は「すでに創られた物理学」の概説ではなく、これから「創りだす物理学」をめざして語られた、湯川物理の真髄を伝えるユニークで興味深く、しかも格調高い名講義の全録である。

ファインマン 物理法則はいかにして発見されたか 岩波書店

内容紹介:物理法則とはどのような性格のもので,それはどのようなものの見方から発見に至ったのか.語りの名手ファインマンさんが,その心躍る展開を若者に熱っぽく語った.また,ノーベル賞受賞となった自身のアイデアと新理論完成までの曲折を,ユーモアを交え分かりやすく解説.物理の魅力あふれる世界に万人を誘う,楽しい入門書となった.

内容紹介2:一般向けの物理学の解説書には、必ず参考文献として取上げられているといっても言い過ぎでない、名著として名高い、著明な本である。・・中略・・・理論物理の考え方、物理法則を発見し作り上げていく過程が、ニュートン以来の事例を、巧みな比喩を用いて解説して説明されている。 物理学の方法論、考え方の基礎が理解できる。

アインシュタイン・インフェルト 物理学はいかに創られたか 上・下

内容紹介:二十世紀を代表する物理学者であるアインシュタインとインフェルトが,専門的予備知識を持たない読者のために,現代物理学の全貌を平易に解説した万人のための入門書.数式を用いず,巧みな比喩と明快な叙述によって,ガリレイやニュートン以来の物理思想から相対性理論および量子論に説き及ぶ.

私は異常な感銘と昂奮(こうふん)を持って読み、相対論と量子論という現代物理学の美しさを知った。敗戦の翌年、父が病死し極貧生活に入ったが、この上下2冊の本を読んで感激し、石にかじりついても理論物理を学ぼうと決めたのである(有馬朗人)。

ガモフ+ラッセル「不思議宇宙のトムキンス」
ガモフの「不思議の国のトムキンス」に、ラッセルが最新の知見を盛り込んで改訂・加筆したバージョンとのことです。読んだことは無いですが、面白そうだと思いました。ただ、書籍評価を見てみると、たとえ不正確な記述を含んではいてもでもガモフのオリジナル版の方が、科学解説本としての趣が強くなってしまった新版よりも味があったという意見も散見されます。

久保謙一 「量子力学はこうなっている」

"ボルツマンの原子" デヴィッド リンドリー 松浦 俊輔() 青土社
ボルツマンの伝記です.訳は多少ぎこちないですが,熱力学,統計力学を学んだ後に読むとおもしろいと思います.

"
マンガ 量子論入門だれでもわかる現代物理 (ブルーバックス)" 講談社
マンガを推薦図書にしたら怒られるかもしれませんが,前期量子論の入門書です.もともと石井力先生が洋書で持っていたのをお借りして読んだのですが,よく書けていると思います.


ロゲルギスト 新 物理の散歩道 ちくま学芸文庫

生活の中で触れる身近な物理現象を,物理的思考により謎解きをするエッセイです.多くは高校物理発展の知識で理解できるものです.身の回りの現象を物理的に考える訓練にもなります.

岩波の「物理の散歩道」は中古でしか入手できませんが,新 物理の散歩道はちくま学芸文庫にあります.

学生時代に図書館で借りて興味深く読んだ思い出があります。

南部陽一郎 クォーク素粒子物理はどこまで進んできたか ブルーバックス

他の先生方も推薦されているので省略

佐藤勝彦 宇宙論入門 岩波新書

2008年に発行された最新の宇宙論への入門書です.アインシュタインの宇宙項から始まって,最新のインフレーション理論やブレーン宇宙まで,門外漢に分かりやすく,かつ面白く解説してあります.夏休みに宇宙の始まりと,来るかもしれない宇宙の終焉に思いをはせてみては.

川端潔 はるかな146億光年の旅 東京理科大学・坊ちゃん選書

鈴木増雄 活力を与える「物理」 東京理科大学・坊ちゃん選書

川村康文 よくわかる、おもしろ理科実験 東京理科大学・坊ちゃん選書


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人物で語る物理入門 () (岩波新書)" 米沢 富美子; 新書; 777
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人物で語る物理入門〈下〉 (岩波新書)" 米沢 富美子; 新書; 777

内容紹介: 物理学の歴史を、重要な業績を残した人物を中心に、後世への影響も含めわかりやすく語る入門書。物理学は20世紀に、それまでの世界観を書き換えるほどの飛躍的な進歩をとげた。発見の物語を楽しみながら物理の基礎が身につく全く新しい入門書。上巻はアリストテレスからアインシュタインまで。下巻では、この時期の一般相対性理論から量子論や宇宙論、クォーク、複雑系などをとりあげる。湯川秀樹や朝永振一郎など日本の物理学者たちも登場。

比較的最近(2005-2006)の本ですが、実際に読んでみて面白かった本です。
値段も高くない岩波新書ですので、学年によらず、物理学科の学生には読んでみてほしい本です。個人的には核分裂の発見に本質的な貢献をしたにもかかわらず後年まで評価されなかったリーゼ・マイトナーが取り上げられているあたりが気に入っています。

ご冗談でしょう、ファインマンさん ファインマン 岩波現代文庫

「中谷宇吉郎随筆集」、「雪」(ともに岩波文庫)、他。

実験物理研究者の心に触れて感動する。

同感です。

寺田寅彦随筆集 岩波文庫

内容紹介:寺田寅彦の随筆は芸術感覚と科学精神との希有な結合から生まれ、それらがみごとな調和をたもっている。しかも主題が人生であれ自然であれ、その語りくちからはいつも温い人間味が伝わって来る。二十代から最晩年の五十代後半まで書きつがれた数多の随筆から珠玉の百十余篇を選んだ。

現在は研究対象となっているフラクタルや渋滞の科学を先取りしている鋭い観察眼と問題意識に敬服する。

ランゲ「物理のパラドックス」
パラドックスや詭弁を問題にした問題集。高校生向けとなっていますが、内容は大学一年生向けです。中古でしか入手できないかも知れません。

都筑卓司「マックスウェルの悪魔(ブルーバックス)」
統計力学の概念についてわかりやすく解説しています。

マッケボイ「量子論入門(ブルーバックス)」
量子力学の発展について解説しています。

ファインマン 光と物質のふしぎな理論 私の量子電磁力学

10桁もの高い精度で実験データを再現し、もっとも完成度の高い物理理論といわれる量子電磁力学を、素人向きに平易に解説した驚くべき本。なじみのある光の干渉から自然に量子力学で重要な概念である複素振幅の干渉を説明し、ファインマンダイアグラムまで至る。使っている数学といえばベクトルの足し算だけで、わかり易く図解してあり、数学の苦手な一般聴衆が無理なく理解できるように配慮しながら、ごまかしなしに誠実に解説している。ちなみに、朝永博士はこの分野の業績でファインマンらとノーベル賞を共同受賞している。量子力学を一通り学んだ人が読んでも、啓発され理解を深められる書だと思います。

戸田盛和 おもちゃセミナー (おもちゃの科学) 日本評論社

これは著者の趣味の本で、著者手書きのイラスト入りで古今東西の力学(一部電磁気)おもちゃの原理を解説してある楽しい本。ほとんどあらゆる種類のおもちゃが網羅されているので、新しい物理おもちゃを発明したいと思っている人(あまりいないでしょうが)は必読。

 

J.ウオーカー、戸田盛和・田中裕訳 ハテ・なぜだろうの物理学

身近な現象の裏にひそむ物理を問題形式で解説した本。自分が知らない自然現象=問題が身のまわりにこんなにもたくさんあることに驚き、そしてそれらが必ずしもすべて明快に物理的に理解されているとは限らないことを気づかせてくれる本。研究所に在籍時代、周年記念公開で一般向きにデモ実験をする必要があったとき、この本からヒントをもらって乗り切ったという点でも思い出深い本。

勝木 渥 物理学に基づく 環境の基礎理論―冷却・循環・エントロピー

内容紹介:われわれは、なぜ水を必要とするのか?なぜ食べ物を必要とするのか?こんな自明の質問も物理学からはちょっと変った答が返ってくる。それは地球規模の環境問題にも通ずるものであり、熱学の基本で重要な概念でもある。現象論にとどまっている類書の中にあって、環境科学の理論構築を目指した野心作である。

最近理科大図書館で借りて面白かった本。これを読めば熱力学がより身近に感じられ、その面白さと重要性がよくわかると思う。

シュレーディンガー 生命とは何か―物理的にみた生細胞 (岩波新書 青版) (新書)

物理学の立場から生命を論じた生物物理学の原典と言える名著。

森島 恒雄訳 ホワイト著 科学と宗教との闘争 岩波新書

武田邦彦 環境問題はなぜウソがまかり通るのか(ペーパーバック)

内容紹介:錦の御旗と化した「地球にやさしい」環境活動が、往々にして科学的な議論を斥け、人々を欺き、むしろ環境を悪化させている。官製リサイクル運動が隠してきた非効率性と利益誘導の実態とは? 地球温暖化を防げない京都議定書―。アル・ゴア氏にとっての「不都合な真実」も次々に明らかになる。

地球温暖化問題を含む環境問題に一石を投じた反響の多い本。日本では報道の影響もあって、二酸化炭素による地球温暖化は科学的事実のように受け止めている人が多いと思うが、いまだに懐疑論があることを知るべきと思う(二酸化炭素は現在の温暖化傾向の主因ではない可能性)。その意味で(この著者にも賛否両論あるが)、一読する価値のある本。寒冷化はもっと怖い、という著者の主張には同感する。もちろん、温暖化であれ寒冷化であれ、化石エネルギーは枯渇するので、環境対策としての緑化・クリーンエネルギーの開発は必要である。

江守正多 地球温暖化の予測は「正しい」か?  不確かな未来に科学が挑む 化学同人

・「第一人者が全てを注ぎ込んだ地球の「これから」 の予測。温暖化に関心がある人にとっての必読書が誕生した。」(茂木健一郎)・「地球温暖化の予測は『正しい』か?」という問いに対する僕の直接の答えは、前提条件が正しければ、不確かさの幅の中に現実が入るだろうという意味において、「正しい」となるでしょう。(5章より)・温暖化予測の主役ともいえる「気候モデル」はいかにつくられているのか。これまで語られる事の少なかった気候モデルの信頼度や不確実性も含めて解説し、地球温暖化について適切に知るための判断材料を提供する。答え合わせのできない未来に挑む研究の最前線からの真摯な言葉の数々。ちょっと立ち止まって、耳を傾けようではないか。(カバー解説)

気候モデルの第一人者が中立的立場をなるべく崩さないように書いています。

この本を読むと、IPCCCO2による温暖化予想は、現在の科学としては最善を尽くしていることがわかる。ただし、モデルがすべての要因を考慮できていない可能性はある。たとえば、水蒸気の影響をどう評価しているのかは詳しい記述がない。これは、入門書として複雑な議論を省いただけかもしれないが。気候変動の問題は、自分で実験して確認することができないので、専門家が提示するデータを信用するしかないのがもどかしい。それでも、以下のような過去の気候変動を読み解いた本は、温暖化問題を考える上で確かな道標になるだろう。

大河内直彦 チェンジング・ブルー−気候変動の謎に迫る

内容紹介:地球温暖化の根源にひそむ、気候変動の謎。本書は、その解明に挑む、科学者たちの姿を活写する。第一線の研究者による、信頼すべき正確な科学的解説。海外の優れたノンフィクションを彷彿させる、スリリングなストーリー展開。読者は本書に、その類稀なる融合を見いだすだろう。問題の本質を理解したい人は、必読の一冊である。

過去の気候変動解明に関わった人々の営みの紹介と、気候変動のメカニズム、地球に残された痕跡からどのようにして過去の気候を再現するのかの原理の説明のバランスがよく、すばらしいの一語に尽きる。気候は天文学的要因(地球の公転軌道や自転軸の周期的変動)のため、氷期と間氷期を周期的に繰り返してきたこと、現在は1万年続く間氷期で暖かくたまたま気候は安定しているが(だからこそ人類の文明が発達できた)、その前の氷期には時には数十年で平均気温が数度も変化していたこと、およそ40万年前の今から4つ前の間氷期が現在の間氷期に似ていて(周期的に一致するため)、人類が影響を与えなければ現在の間氷期はあと1万年は続くことが予想されること、北大西洋で沈み込んで深層水を形成する全地球的な海流の流れが止まると寒冷化が起こること(温暖化がグリーンランドの氷河を溶かし、この流れを止めて寒冷化につながる可能性がある)、地球の気候は非線形なシステムで、これらのメカニズムで同じ日射量に対して高温と低温の2つの安定解があること、などが重要である。1年生の力学で学ぶ楕円軌道、歳差運動やコリオリ力が気候変動に影響していることがわかり、感動するのでは?物理学を学べば気候変動の分野にも貢献できます。

根上生也 トポロジカル宇宙 完全版-ポアンカレ予想解決への道


内容紹介:「宇宙はどのような形をしているのだろう?」と、小さい頃に思いを巡らしたことはありませんでしょうか。本書は、そこを出発点にしています。宇宙の形を宇宙の外に出ないで、理解するにはどうしたらよいのだろう、と考えつつ、数学のトポロジーの世界は広がります。そして、100年来未解決であった『ポアンカレ予想』につながっていくのです。本書を読み進むうちに「ポアンカレ予想解決」に至るまでの全行程をたどることができます。数式を使わず、ていねいに書かれた記述をとおして、『ポアンカレ予想』に挑戦してみてください。         

宇宙の構造と関連づけて、興味深く高次元世界、ポアンカレ予想の意義を紹介した奇書。7次元宇宙の記述に頭がくらくらした。トポロジー入門書としても圧倒的にお薦めできる(あくまでも趣味の範囲としてのトポロジー。これを読んだからといって宇宙物理や一般相対論の役に立つとはいえない。ポアンカレ予想の解決者ペレルマンは物理の素養があり、その証明に物理学的発想を用いていて、拡散方程式やナブラ演算子が出てくる)。

グリーン エレガントな宇宙 超ひも理論がすべてを解明する

内容紹介:本書の主題である超ひも理論は、相対性理論と量子力学の対立という、物理学最大の難問を解決する。そればかりではない。宇宙の本当の姿を映し出し、万物を説明し尽くす根本の理論、究極の理論であると考えられている。宇宙の本当の姿とは?第一線の研究者である著者が、巧みな表現で描く超ひも理論の最新成果から、驚くべき宇宙の姿が明らかになる。

リサ・ランドール ワープする宇宙 5次元時空の謎を解く

内容紹介:宇宙は、私たちが実感できる3次元+時間という構成ではないらしい。そこには、もうひとつの見えない次元があるというのだ。もし、もうひとつの次元が存在するのなら、なぜ私たちには見えないのか?それは、私たちの世界にどう影響しているのか?どうしたらその存在を証明できるのか?現代物理学の歩みから最新理論まで、数式を一切使わずわかりやすく解説しながら、見えない5番めの次元の驚異的な世界に私たちを導いていく。英米の大学でテキストとして使われている話題の著書Warped Passagesの邦訳。

ミチオ・カク パラレルワールド−11次元の宇宙から超空間へ

内容紹介:ブラックホールへの決死の旅や、タイムマシン、もうひとつの宇宙、そして多次元空間本書は宇宙論の世界を席捲する革新的な宇宙の姿を鮮やかに描き出す。今日、ひも理論とその発展理論であるM理論は圧倒的な支持を得て、世界の名だたる物理学者や天文学者が、最先端の波検出器、重力レンズ、衛星、天体望遠鏡を動員し、多宇宙(マルチバース)理論の検証に取り組んでいる。もしパラレルワールドが存在するのなら、いつかこの宇宙が暗く凍ったビッグフリーズを迎えるとき、われわれの未来の先進文明は、次元の「救命ボート」によってこの宇宙を脱出し、パラレルワールドへと至る方法を見つけるであろう。

上記三書はどれも評判がよいが、「パラレルワールド」は、宇宙論・究極理論に関するほとんどあらゆる話題を、巧みな比喩とSFや他の科学啓蒙書の適切な引用によりわかりやすく解説していて、全く飽きさせずに一気に読ませる内容で一番のおすすめ。遠い将来の宇宙、そして人類の未来はどうなるのか、文明論としても示唆に富む。書評にあるように物理の予備知識がなくても楽しめる内容になっている。「エレガントな宇宙」と「ワープする宇宙」は後半は相当難しく、物理学科でも高学年向きである。前者は、たとえば相対論を学んだのちに読めば、すべての物体は時空間を光の速度で移動している、という解釈はうなずけるものがあるだろう。後者は、重力が他の力と比べてなぜ弱いのかを解明するのが主要テーマだが、その議論についていくにはガウスの法則を知っているほうがよい。

マゲイジョ 光速より速い光  アインシュタインに挑む若き科学者の物語 青木薫 訳

宇宙の始まりを説明するビッグバン理論の問題点を解決するための理論としてインフレーション理論が主流となっているが、別の可能性として、真空中の光速が宇宙誕生時には今よりもずっと大きかったという光速変動理論を唱えた物理学者の自伝。非常に面白く、一気に読まされた。光速よりも速い光、というタイトルは一見アインシュタインの相対性理論に異を唱えるトンデモ本のように見えるが、主張しているのは物理定数と思われている光速が定数ではない、ということで、アインシュタインの理論とは矛盾しない。しかし、インフレーション理論が流行している中で極めて異端の理論であり、勇気をもってそれを唱えて冷たい評価と闘いながら次第にインフレーション理論にも対抗できる理論として受け入れられるまで成長させていくようすが語られる。科学者の研究に取り組む姿勢として簡単にまねができないが理想の姿の一つであり、感銘を受けた。光速が定数でないと仮定すると何が起こるか、を考えるのは極めて刺激的で、数々の驚くべき結果が示されている(例えば、エネルギー保存則すら破られる。)が、門外漢としてはインフレーション理論よりもわかり易く、十分説得力があるように思えた。ただ2つ、気になったことは、インフレーション理論で佐藤勝彦に言及がないことと、相対性理論をできるだけかみくだいて説明しようと努力しているのはすばらしいが、アインシュタインの牛の夢の話はどちらの観測者も静止しているので同時性が観測者によって異なることの説明ではなく光速が有限であることの説明でしかないことである。

小室直樹 数学を使わない数学の講義

内容紹介:技巧を駆使しなくても、数学の本質(論理)を理解することによって、数学的発想を持つ事が出来る。仕事に役立つ論理的発想のバイブル。

ソビエトの崩壊を1980年に予言したことで有名。この人を学問のモンスターと評する人もいるが、同感。高校時代からこの著者のファンで、ほとんどの著作を読んでいる。経済学や社会学も数学や物理学のように論理的な科学であることを教えてくれた。数学的思考の意義をわかりやすく説く痛快な書。