ホウレン草の光化学系II(PSII)の非線形吸収分光

Nonlinear spectroscopy of photosystemU isolated from spinach

高等植物の葉緑体中の光化学系U(PSU)は光合成初期過程において水を酸化して電子を抜き取り、膜の内外にプロトン濃度勾配を作る反応を担っている。光集光系(LHCU)から励起エネルギーを受け取った反応中心クロロフィルa対(P680)の励起から反応が始まる。

 この実験は光化学系Uアンテナ色素蛋白複合体(反応中心と光集光系LHCを含み、クロロフィルa、b、カロチノイド、フェオフィチンなどの色素で構成される)の非線形分光を通してその励起状態を観察し、より詳細に光化学系Uの光合成反応への寄与を解明しようというものである。

 ホウレン草から抽出した光化学系Uについて、ポリマー膜中で変調周波数fに対し2fでロックイン検出する電場変調分光を行った結果、再現性のある信号を観察した。

図1 光化学系U膜中の吸収スペクトルと電場変調スペクトル(1.25kV/cm)

この形で測定される電場変調分光の信号の多くが吸収スペクトルの一次微分形で現れるが、この実験では単純にPSUの吸収スペクトルの一次微分形ではあらわせないため、各構成色素の吸収スペクトルの一次微分形を足し合わせることでフィットすることを試みている。

August, 2004