ポルフィリンJ会合体の電場変調吸収分光

Electro-absorption spectroscopy of Porphyrin J-aggregates

 

 光合成を行うクロロフィルは、ポルフィリン分子が一次元状もしくは環状に並んだ会合体で構成され、その電子状態はJ会合体やH会合体の励起子との類似性があると考えられている。中でもTPPS(tetra phenyl porphyrin sulfonic acid) J会合体はそのモデル物質として現在盛んに研究が行われている分子会合体である(図1)。J会合体は一分子の場合に比べ吸収帯が低エネルギーシフトし先鋭化することが特徴であり、これは分子同士の遷移双極子モーメント間相互作用により励起状態が会合体全体に広がって存在する励起子を形成するようになるためと考えられている。

 

 

本研究ではポリマー中に分散したTPPSJ会合体、単量体それぞれに対して可視域の吸収帯における電場効果を解明するために電場変調吸収分光測定を行った(図2)。

 

 

変調周波数fに対して参照周波数2fでロックイン検出した変調吸収スペクトルにおいて吸収スペクトルの一次微分形は静的分極率の変化(Δα)、二次微分形は静的双極子モーメントの変化(Δμ)の誘起によるものであると考えられる((1)式)。

 

(1)

3 TPPS会合体、単量体の吸収スペクトル(上)、1次(中)と2次(下)の電場変調スペクトル

 

電場変調スペクトルの解析結果より光吸収による静的分極率変化はTPPSJ会合体において約12000Å、単量体において約200Åと見積もられた。会合による静的分極率変化の増大は会合数を反映しており、会合体と単量体の静的分極率変化から励起子のコヒーレントなサイズが約60分子にもわたっていることがわかった。また、変調周波数依存性について詳しく調べ、十分に高い(>kHz)変調周波数でなければ静的分極率変化を正しく評価できないことを明らかにした。

 

August, 2004