• 2012年度のテーマ

    • 強磁場下のカイラル凝縮の構造 (太田、小松、亀山)-
       私たちの世界を構成する陽子や中性子はそれぞれ固有の質量を持っていますが、その内部にある素粒子クォークの質量は0ほぼであることが知られています。このギャップを埋めるのが、カイラル対称性の自発的破れというアイデアです。それによれば、私たちの世界の真空には一様にカイラル凝縮と呼ばれるクォーク・反クォークの対が凝縮していると考え、それによって物質の質量が生まれると考えます。この物理系が強磁場下にあった場合にどうなるかを考えるのがこの研究の目的です。実際に1010ガウスほどの強磁場は中性子星などの天体内に存在しており、現象を理解する上でも重要です。
       クォークの相互作用として、南部ヨナラシニオ模型を用いてカイラル凝縮を記述し、強磁場でかつ有限温度・有限密度の状況下でどのように変化するかを計算する。
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    • Wess-Zumino-Witten異常項が引き起こす核子の変形 (森、山口)
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       Wess-Zumino-Witten項は軸性ベクトルカレントに関する量子異常を記述する低エネルギー相互作用で、非常に特徴的な構造をしている。近年、この項の存在により強磁場下での、素粒子の運動に特徴的な振る舞いが現れる可能性が指摘された。
       本研究ではこの可能性を考慮し、特に大きな効果が期待される有限バリオン化学ポテンシャル系でかつ強磁場な状況下で核子に与える影響を検討する。核子をパイ中間子のトポロジカル・ソリトンとして記述するSkyrme模型を用い、ゲージ化したWZW項がもたらす効果を計算する。
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    • 中性子星の最大質量と核物質の状態方程式 (上野、十文字)
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       中性子星は重力崩壊型超新星爆発が起こった後の残骸として存在する星である。半径10km程度の星が太陽と同程度の質量を有しており、宇宙で最も高密度な物質である。この星は収縮しようとする強大な重力を、内部の主成分である中性子の縮退圧により支えることで存在している。厳密な計算には、一般相対論から導出されるTOV方程式とミクロな核物質(主成分は中性子と陽子、電子)の状態方程式を用いることで中性子星の質量や半径が得られる。得られた中性子星の質量の最大値は観測地とほぼ一致していた。ところが近年新しい観測法で測定された中性子星の質量は太陽の2倍程度となるため、今までの理論計算とは一致しない。本研究では、物質の状態方程式として様々な可能性を考慮し、中性子星の質量が再現可能かどうかを検討する。

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