卒業研究テーマ


N体シュミレーションによる宇宙大規模構造の形成

個々の銀河を質点として扱い、自己重力と宇宙膨張のもとでの運動を刻々追跡し、銀河団や超銀河団、あるいはボイド構造等が形成されていく過程を再現する。結果の良否は質点の位置を三次元プロットしたり二体相関関数などの統計量を用いて判定する。

銀河の個数分布による宇宙論パラメーターの決定

仮定した宇宙モデルに対して、銀河の計数と見かけの等級(N-m関係)あるいは銀河の計数と赤方偏移パラメータ(N-z関係)の理論関係を求める。 得られた結果を観測データーと比較をすることにより、ハッブル定数H0、密度パラメーターΩ0、宇宙項Λの値等を推定する。

銀河による重力レンズ効果の研究

大熊座のクェーサー(準恒星状天体)0957+561から発した別々の光線が伝播経路の途中に存在する銀河団の膨大な質量で生じる重力により曲げられ地球の位置で交叉し、二重像を結ぶが、これらの光線の経路長に差があるため、地球の到達時間が異なる。二重像の明るさの時間変動を追うとこの時間差が測れる。 いっぽうこの時間差は宇宙の膨張率、質量密度、曲率、宇宙項といった宇宙項パラメーターに依存するため、これらの値の最適値を推定することができる。

クェーサーのLα線の森とボイド構造

クェーサーのスペクトルには水素原子の光吸収で生じる無数の赤方偏移したLα線が見られる。 クェーサーからの光がボイドの壁に相当した部分に存在する水素雲や銀河等を通過する際にこれらの線スペクトルが生じるものと考えれば、測定されたLα線の間隔と宇宙モデルから各時代におけるボイドの直径が推定できる。 こうして得られた直径が現在すべて等しくなるような宇宙モデルを探しあて、他の方法で得られたモデルと比較検討する。

星間雲から主系列星への進化過程の研究

星間雲の収縮から主系列星に到る過程を輻射流体力学計算コードにより追跡し、得られる温度分布、密度分布、放射の強度分布等を調べる。

恒星大気モデルの計算とスペクトル線の定量解析

静水圧平衡と輻射平衡にある星の大気(外層)のモデルを様々な化学組成、有効温度、表面重力加速度を仮定して計算し、それらを用いて連続光の色や吸収線の形状あるいは等積幅を求め観測データーと比較する。 場合によっては星の自転や乱流の速度の効果も考慮する必要がある。

偏光度データーによる金星の雲層構造とエアロゾル粒子の特性

地上観測やパイオニア金星探査機による直線偏光度の観測データ等を光多重散乱モデルから得られる理論値と比較し、主雲層やもやの層を構成するエアロゾル粒子の特性や高度分布を決定する。

ガリレオ探査機撮像の木星データに基づく雲層構造と構成粒子の光学的特性の決定

現在木星を周回中であるガリレオ探査機が撮像した高分解能画像データを処理し、大赤班やその近傍の輝度分布データを抽出する。 そうしたデーターのグラフィックスで視覚的な把握をすると同時に光多重散乱計算による理論値と比較を行い、雲層構造の局所的な差異や構成粒子の散乱特性と高度分布等を調べる。 なお、このテーマは本研究室と佐藤毅彦氏東京理科大学計算科学フロンティアセンター講師、理学博士)と共同プロジェクトになっている関係上、研究指導は川端と佐藤講師の両者で行う。

偏光撮像装置HOPSの製作と京大飛騨天文台での観測

惑星観測専用の軽量で、しかも高い解像度の二次元偏光度分布が撮像できる装置のデザインと製作を行う。 撮像波帯域は400-900nmである。 完成後は京大付属飛騨天文台の65cm屈折望遠鏡に装着して観測を行う。 このプロジェクトも本研究室と佐藤毅彦氏東京理科大学計算科学研究フロンティアセンター講師、理学博士)との共同研究テーマである。 状況によっては野田キャンパスの計算科学研究フロンティアセンター棟での作業が必要となる。 ハードウェア製作やエレクトロニクスに強い人を歓迎する。

太陽系外縁部にある小天体の研究

太陽系の外縁部に存在するエッジワース-カイパーベルト天体(Edgeworth-Kuiper Belt Objects)の形成過程を東京大学木曾観測所で得られたデータに基づき研究したり、移動天体を自動的に検出するプログラムを開発したりする。 これに関連して、彗星、小惑星、流星の研究も可能。

並列計算プログラムの開発

8台の計算機をつないだVT-Alpha並列システム(UNIX+Linux)を利用して、従来の単体計算機用プログラム(多体問題シュミレーション、多重散乱)や新たに構築するシュミレーションプログラムを並列計算機型に変換し計算速度を向上させる。 並列計算機は近年多方面で利用されており、大学院進学志望者のみならず企業就職希望者にとっても身につけておいて損のない技術である。