研究の世界:錯体分子の集合体の化学


平成14年度 研究テーマ一覧



現在の興味

私たちを取り巻く物質中では、多くの場合、分子は分子集合状態(周囲の分子との相互作用による構造体の形成:結晶、液晶、溶液など)にあり、その構造の多様性から、多様な機能が発現する。では、分子たちはどのように相互作用し、どのような集合状態にあるのだろう。私たちが手にしている解析手段は非常に限られており、はっきりしない場合が多いのが現状である。しかし、分子の集合状態を制御し、設計通りの構造を構築できるようになれば、多様な機能をもった物質を産み出すことができるようになるだろう。さらに金属イオンのバリエーションがある金属錯体を用いれば、多種多様な機能を産み出すことができるだろう。現在、そのような観点から金属錯体を中心に分子集合体の評価、制御、利用をテーマに研究を進めている。詳細は以下の通り。


分子集合体の評価

走査トンネル顕微鏡を用いる分子集合状態の構造解析

原子を識別できるほど高い分解能をもつ走査トンネル顕微鏡を用いて、金属錯体分子や有機分子の液晶について電極表面での分子会合構造を直接観察している。

トンネルギャップイメージング法の開発

通常の測定では表面を平面方向に走査するため凹凸しかわからない走査トンネル顕微鏡の測定法を工夫し、トンネル電流のトンネルギャップ巾依存性を表面での水平位置を走査しながら測定するトンネルギャップイメージング法を開発した。トンネルギャップイメージング法では高さ方向の電子状態密度の広がりを知ることができる。

光照射型走査トンネル顕微鏡の開発

走査トンネル顕微鏡のトンネルギャップ中に分光した光を照射し、トンネル電流の照射光依存性を表面での水平位置を走査しながら測定する分光照射型トンネル顕微鏡を開発している。光吸収スペクトルに相当する情報をトンネル電流の変化として検出できる。


分子集合体の制御

salen錯体誘導体の分子会合状態の制御

平面4配位型の[Ni(salen)]や[Cu(salen)]に長鎖アルキル置換基を導入した金属錯体を合成したところ、ニッケル錯体が2量体を構成成分とする液晶になることを見出した。さらにこのニッケル錯体の2量体がCH−πおよびπ−π相互作用が共存する特殊な構造であることを結晶構造解析から明らかにした。

人工脂質を利用した金属錯体分子の集合状態制御

[Ni(dmit)2]系の金属錯体の長鎖アルキル4級アンモニウム塩の結晶構造解析の結果、人工脂質であるアンモニウム塩が結晶中で2分子膜構造をとることを明らかにした。さらに単分子膜中でも同様の構造を有することを明らかにした。

アルキル置換大環状金属錯体のクロミズム現象

Curtis型縮合反応から得られる大環状金属錯体に長鎖アルキル基を導入し、その溶液系での配位環境の変化をスペクトル測定から解析している。


分子集合体の利用

脂溶性金属錯体を用いるセンサの開発

脂溶性の金属錯体の液膜を用いてセンサなどの、機能性電極としての応用を目指している。

長周期層状結晶の育成

比較的長周期の層状結晶が得られる金属錯体の脂質塩を用いて、長周期構造を持った結晶の育成を行っている。


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