東京理科大学 理学部第一部化学科 築山研究室

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赤外自由電子レーザーを用いた研究

赤外自由電子レーザー(IR-FEL: InfraRed Free Electron Laser)は、

  1. 中赤外領域(5〜14μm)で波長が可変であり、
  2. 直線偏光性を持ち、
  3. ピコ秒パルスの高出力、高輝度のレーザーである。

分子において基準振動の基音の周波数はほとんど中赤外領域にあることから、FEL によって分子のある特定の振動モードを選択的に励起することができる。このような性質を持つ FEL を用いて築山研究室では以下のテーマで研究を行っている。

赤外多光子吸収(IRMPA)を用いた光化学反応

高輝度な赤外光を分子に照射すると、分子は多数の光子を吸収し、高振動状態へ励起されます。この過程は赤外多光子吸収(IRMPA)と呼ばれます。IRMPAを用いることで、例えば高温条件下でのみ進行する構造異性化や解離反応を、常温でも誘起することができます。様々な副生成物を生じてしまう熱反応とは異なり、IRMPAによる反応では、対象分子の特定の振動運動を励起することで副生成物を少なく構造変化を誘導できるという利点があります。当研究室では、このようなIRMPAによる反応の特徴を活かし、望ましい反応のみを選択的に進行させることを目的として研究を行っています。

図1 赤外多光子吸収による反応イメージ 図2 実際に観測された反応
実験の様子

FEL-TUSの高分子材料に対するアブレーション特性

半導体を作る等の極めて小さなものを超微細加工する場合、レーザーが利用されています。現在の産業界では大きなエネルギーを持つ紫外領域のレーザーを用いた加工装置が主流になっています。しかし、加工対象の分子が光を吸収しきれなかった場合、大きな光エネルギーは熱として放出され、超微細加工からかけ離れたものになってしまいます。この問題を解決するべく、築山研究室では加工対象を高分子材料に絞り、一光子あたりのエネルギーの小さな赤外光を利用し、超微細加工のための基礎データを収集しています。

レーザー顕微鏡による解析