東京理科大学 理学部第一部化学科 築山研究室

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パルス放電スペースシミュレーターによる新奇な分子の分光

パルス放電を用いて新しい分子、もしくは新しい電子状態の発光スペクトルの分光測定を行い、その電子・振動・回転構造を明らかにする。

宇宙には星の光を吸収する物質が存在する。そのなかでも可視光領域に見られる吸収線―ぼやけた星間線(Diffuse Interstellar Bands)―は、1922年に発見され、現在に至るまでさまざまな試みがされているが帰属されていない(図1)。

基本的な分子にも、基底状態からのレーザー励起ではつくることが難しい電子状態が存在し、これらの観測はいまだ十分に行われていない。

これらの問題にアプローチするために、パルス放電発光分光装置(パルス放電スペースシュミレーター)を作成し現在運用している(図2-4)。1500Vで放電を行い(図5)、ホロカソード放電を用いてイオンを生成させる。このホロカソード放電はイオンの生成効率がよく、Arでは、中性に対して1/10〜1/100のAr+を生成でき、C2では、中性に対して1/2のC2+を生成できる。さらに最近では、HC4H+(図6)やH2C4H2+(図7)からの発光の高感度検出にも成功した。(2015年度の本テーマへの卒研生配属はありません。)

参考論文: Araki et al., J. Mol. Spectros., 297, 51-57 (2014).

図1 ぼやけた星間線(Diffuse Interstellar Bands) 図2 放電発光分光装置の装置図(拡大画像)
図3 320mm分光器 図4 自作の高圧パルス発生器
図5 放電セルの発光の様子 図6 HC4H+からの発光
図7 H2C4H2+からの発光とポテンシャル