9601- 初詣 | ||
僕は毎年初詣は赤坂の氷川神社にいく.そこは江戸時代からある東京の古い神社のひとつで境内も広く木立も鬱蒼としている.初めて訪れる人は東京の都心にこのようナイススペースがあることに意外な印象を受ける.言ってみれば,「都市の不動点」のようなところで,ちょっと引っ込んだ高台の杜から変化の激しい赤坂の街を眺めている,といった趣のところだ.ひっそりと静まりかえった繁華街,放送局,オフィス街をすぎて,石段の参道をのぼると地元のひとたちが少しだけお参りにきている.そんな落ち着いたかんじのところである.古風なようでもそこは赤坂の神社だから,最先端にいる.アメリカ大使館宿舎が隣にあるし,過去50年間,近代化,国際化して,変貌してきた都市の渦中にずっとあったわけで,たとえばアークヒルズのANAホテルのなかには結婚式のための出張所(?)もある.超高層ビルの中のお宮と江戸時代以来の情緒を残している境内のコントラストがきわめて現代的だ. ところで,東京の都心部は地形が微妙な起伏に富んでおり,代表的な繁華街は谷筋にそって発達している.赤坂や渋谷は地名が示すようにもともと坂であり谷であったところだ.暖流と寒流の流れ込む潮目が豊かな漁場となるように,東京では都市の先端の出来事は山の手と下町が接するこうしたところに起こる.1990年代後期の東京でも赤坂や渋谷に新しい都市の動きが出現しつつある.昭和の時代を風靡し数々の政治の裏舞台となった料亭や80年代後期のバブル時代の大資本による企画ビルといった過去の時代のものが,独立系エレクトロレジャーの先端複合施設に生まれ変わってきているのである.国際化,情報化,都市生活のパーソナル化を背景とするこれらの施設の登場は,制度疲労をおこし動脈硬化におちいっている日本の都市をしなやかにリフレッシュしていく動きとして注目される.都市はいつでも新しい変化を求めており,新しいレジャーの形態は都市に新しいパワーを与える. 変わらぬものと変わりゆくもののあいだのダイナミズムこそ都市文化の源なのである. |
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