9602- ビルディングタイプ | ||
建築の型のことを,ビルディングタイプという. 学校ならば「学校らしく」,デパートならば「デパートらしく」というように,建築はおおむね「〜らしく」つくられると人は皆安心するものだ.団地は「団地らしい」し,工場は「工場らしい」ほうがわかりやすい.しかし,こうしたビルディングタイプは,実はそれほど昔からあったわけではない.僕が少年のころは,学校は木造が多かったし,アパートだって工場だってコンクリートでできた箱のような建築はほとんど無かった.わずか30年ほど前の日本の都市にとって「〜らしい」という建築は今とはまったく違うもののことを指していたのである.現在の街でよくみかけるコンクリートの四角い箱の建築は機能主義の建築といって,効率良く人やものが中に収まる建築を良しとする考え方からできている.すっきり無駄なものを省いたところが特徴であるけれども味気ないといえば味気ないので,90年代の現在ではデザインにいろいろと工夫がされるようになっている.建築の内容(コンテンツ)を思わぬ用途にしたり,いくつかの意外な用途の組み合わせによってできる新しいタイプの建築に関心が集まっているのである.そして,それは世界的な傾向だ. アメリカのロバート・ベンチューリという国際的に著名な建築家が「ラスベガスに学ぶ("Learning from Las Vegas")」という建築デザインの本を書いたのは1960年代のことだった.この本がきっかけとなって世界中で無味乾燥な近代建築のスタイルについて見直しの気運が広がり,いろいろなデザインが試みられるようになったのである.ラスベガスの「ネオン」「サイン」「カードボード(看板)」に見られる自由な発想の建築の作り方が,建築の思想とデザインに新しい活力を与え都市に楽しさと元気をとりもどすきっかけをつくったというわけである. 渋谷や池袋に現れつつある「パチンコタワー」は過渡期にある今という時代が求めたまったく新しいビルディングタイプであり,次世代の都市のありようを予感させる建築だ.都市に暮らす人々に楽しさと元気を与える新しいビルディングタイプの誕生である. |
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