9608- 工事中 | ||
日本の都市の風景は過去四半世紀ずいぶん変わってきた.それも,たいへんな規模で,猛烈なスピードで.バブルは去ったけれど,これから都市はどのような方向へとむかっていくのだろうか. 東京は毎日が工事中だった.高度経済成長期の東京に育った僕にとって都市とはいつも工事現場のようなものだ.いつまでたってもできあがることがない.僕が今までに手がけてきた少なからぬ数の建築もほとんどすべて建てかえだった.アミューズメント施設もオフィスも住宅も病院もすべて建てかえである.築20年から30年の建築を壊して新しく建築をつくる.すでにある都市を壊しての工事が続くのだから都市が完成することはない.西欧の都市のようにできあがってしまった都市とちがって,日本の都市は見た目には無秩序のようだけれどもバイタリティを感じるのである. ところで,1960年代の東京はまだあちこちに「空き地」や「原っぱ」のあるルース(緩やか)な都市で,建築は「空き地」に新築されるのがふつうだった.1980年代になると都市に「空き地」はなくなり,古い建築を取り壊して新たに建築をつくることが始まった.建築は物理的に高く,大きく,体積が増えていく.そして都市のオープンスペースはどんどん少なくなってきてしまった.窮屈になりすぎると都市の元気がなくなってしまう.だから,新たに工事できるところをつくることも大切になってくる.僕は,ぎゅうぎゅうに空間をつめこんでいくことばかりではなく,いわば立体的な「空き地」や「原っぱ」を都市空間に入れこんでいくことを考えている.くつろいだり,いろいろに使うことができるゆとりのための「空き地」.それが立体的に組み込まれた建築こそ,これからの建築だ. エレクトロレジャー施設は,都市にゆとりを挿入する「空き地」のような役割があると思う.そういえば,「新装開店」というのも店をリフレッシュするための方法で,いつでも「工事中」の都市と同じように,人間の知恵という気がする. |
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