9609- 漫画と模型  
 

建築家には,ふたつのタイプがある.
ひとつは漫画タイプ,もうひとつは模型タイプである.漫画タイプとか模型タイプといっても,漫画のような建築(!?)をつくるというわけではないし模型のような建築をつくるというわけでもない.活躍している日本の建築家に,少年少女のころ何に夢中になっていたのか尋ねてみると,僕を含めて皆だいたい漫画を描くことに熱中していたか,模型の飛行機,船,自動車,鉄道を一生懸命つくっていた,というわけである.
漫画タイプの人はとにかくなんでも絵にする.紙の切れ端があれば,さらさらとスケッチを描く.イメージしていることや,部屋のかたちをスタディしてみたり,景色を描いてみたり,旅で見かけた人を描いたり,ディテールといって建築の細部のデザインを考えたりするためにスケッチを描く.とても絵の上手な人も多くこのような建築家の設計する建築はだいたいバランスとれていて,格好がよい.漫画的なイラスト的な絵が得意な人は,建築の部分部分にアイディアや工夫がこめられた面白い建築をつくることが多い.
模型タイプの人は別名「もの派」ともいわれていて立体的にものの組み立てを考えることが好きな人たちだ.僕たちが子供のころ,模型は紙や木(バルサ),プラスティック板,金属板などを加工して部品から自分たちで作っていた.ただキットを組み立てるのではなく,まさに設計して制作するのである.また,プラモデルやOHゲージといった鉄道模型のセットにも自分なりの物語と工夫がこらされていて,同じものをたくさんつくるのではなく自分の世界を具体的につくることに模型タイプは熱中していた.「もの派」のつくる建築はいうまでもなく立体的にきちんとできている.組み立てることの正確さを大切にするのでしっかりした建築をつくる.いずれのタイプの建築家もそれぞれによさのある建築をつくっているのである.
現代は,ゲームの時代である.テレビゲーム,コンピュータゲーム,エレクトロレジャーで育った子供たち,未来の建築家はどのような建築をつくっていくのだろうか?