9704- まちの商店街  
 

日本の町にはどこにでも商店街がある.長さが数十メートルから数百メートルのものまであり,アーケードがあったり,最近では歩道がレンガできれいに舗装してあったり,電信柱をなくしてケーブルを地中に埋めたりいろいろな工夫がされている.特徴のある町並みの商店街や活気の満ちた商店街を歩くのは,買い物のないときでも楽しいものだ.
どこの町にでもあるこうした商店街は,実は世界の都市のどこにもない珍しいものである.東京首都圏を例にとると何百とあるすべての駅前には商店街がある.また,駅から離れた住宅地にも必ず店が並んでいる通りがある.歩いていけるところにある生活に密着した小さなスケールの商店街は以外とよその国には見ることができない.よその国では,大きな建築の1階に店に入って並んでいたり,大きな市場があったりということはあるけれども,八百屋さんと魚屋さんとパン屋さんと文房具屋さんと薬屋さんとお菓子屋さんとうどん屋さんとが仲良く道の両側に並んでいるといった感じのところは意外と少ないのである.
長い商店街になると八百屋さんが何軒かあって,隣りに並んで「いらっしゃい,いらっしゃい.今日は大根が安いよ」なんていうのもちょっとはばかられるから,互いに離れてたっていたりする.都市計画学会の論文集で,八百屋さんと魚屋さんが隣りに並んでいる確率を計算していたりする研究報告を以前見かけたけれど,こうした研究は日本ならではの発想だろう.パチンコ店は商店街にあってとても大切な要素で,なんだか明るく元気な感じを与えている.パチンコ店のとなりには何屋さんが多いとか,おむかいには何屋さんが多いとか,そうした研究はあるのだろうか.パチンコ店が流行っているような商店街は元気な商店街で皆な仲良く新しいことにも前向きに取り組んでいるにちがいない.商店街は今大型量販店におされてたいへんなところが多いけれど,品揃えと値段サービスに加えて,歩くこと自体が楽しい町並みと活気ある都市空間が整えば,シナリオどおり疑似的につくられた大きな箱の中のショッピングストリートにあきた人たちがもどってくるはずだ.町と共にある商店街には頑張ってもらいたい.