9706- HKのビッグマック  
 

返還前の香港に行った.歴史的な転換点で都市が推移していく雰囲気を感じてみたかったからである.
キャセイパシフィックのボーイング機は右に旋回して香港啓徳空港にむけて着陸体制をとった.香港はいくつもの島々と中国大陸へと続く九龍半島からなるところで,ジェット機は海に点々とする島々と半島をかすめ西側から高度を下げていく.そのため眼下にいくつもの美しい島々や都市をサポートするインフラストラクチャー,そして世界最高密度の高層住宅や高層ビルをかすめてランディングする.窓から繰り広げられる着陸直前の風景は他の都市では味わえないものだ.この数年のあいだに何度か訪れているのだけれど,来るたびに古くなった街区が新しく大きく高いビルに立て替えられている.1990年に完成した香港コンベンションアンドエキシビジョンセンターのある灣仔にホテルがとってあった.タクシーでそこに向かうあいだ目に映る景色は建設につぐ建設の風景で現在の日本からは想像もできないほど活気に満ちたものだった.そういえば飛行機の窓から見えた島々を結ぶ巨大なブリッジは建設中の新空港へむかう高速道路と鉄道が走る世界最大級のテンションブリッジだったにちがいない.
九龍からの海底トンネルを抜けると見えてきたのはとてつもなく巨大な量塊で目を疑うほどの建物だった.それは,東京ドームが小さなお饅頭だとすればマグドナルドのビッグマックくらいある大きさのしろもので,とにかくなんともいえず格好のよくないボテっとした姿をしている.「白鳥がはばたく様子をイメージしたらしいけれど,実際は亀みたいだね.」と香港チャイニーズの友だちはいうのだった.大きな中国に飲み込まれまいという気持ちが格好はともかく巨大なコンベンションセンターの増築を始め街中の巨大工事を押し進めるパワーとなっているのだろう.歴史の潮目にあたってそこを生き抜こうとする香港人のバイタリティとたくましさに僕は大きな刺激を受けた.いろいろあるけど,アジアは元気に頑張っている.日本という島にいる僕ももっともっと元気に頑張りたいと思ったのである.