ハドロン物理とは

この世界の物質は様々な原子で構成されています。原子自身は中心にある原子核と回りを 運動している電子で作られており、原子核はさらに陽子と中性子から出来ています。 陽子や中性子は中間子(π、ρなど)を交換することで引き付け合い、原子核を構成して いるのです。

このような陽子、中性子、中間子などの素粒子のことを総称して「ハドロン」と呼びます。 ハドロン物理とはこれらの粒子の性質やその粒子間の相互作用を研究するものです。 この世界を形作っている物質の構造を素粒子間の相互作用から出発して理解します。 そうすることにより、普段に我々が目にしないような世界ー宇宙が 始まった瞬間や、星の内部ーなどに適用して、過去に何が起こったかを知り、未来に 何が起こるのかを予言することができます。

ではハドロンの世界を支配しているのはどのような力学でしょうか?ハドロンはどのような 内部構造をしているのでしょうか? ハドロンは クォークと呼ばれる基本粒子がグルーオンを交換することで結びついて存在している こと が分かって来ました。その力学は量子色力学(QCD)と呼ばれ、強い相互作用の 場の理論です。残念ながら、摂動展開が不可能なため、実際の応用には大きい困難があります。

また、QCDに電磁気力と弱い相互作用の理論を併せた理論体系を「標準模型」と呼びます。 この標準模型を 理解し、現象に適用することで、我々の世界の成り立ちを知ることができます。 このような理論体系を構築するに当たって、我々の持っているアイデア(Key Words)は 「ゲージ理論」、「対称性と自発的破れ」、「相対論的場の理論」などであり、それらを 駆使ししなければなりません。

現在のところほとんどすべての物理現象は標準模型で記述されると考えられて います。しかし、実際のところ標準模型を用いて計算できる物理量はごく限られた ものであり、様々な困難があります。また、いくつかの実験事実に関しては、標準模型で 説明できないものもあり、新たな理論が必要となっています。

近年の大きな発展は、クォークグルーオンプラズマ状態の発見です。
宇宙の始まりはビッグバンであると考えられていますが、その直後にはまだ陽子や中性子が 存在していない時期がありました。そこに存在したのは自由なクォークとグルーオンのプラズマ 状態であったと理論的には考えられます。 では、それを実験で再現できないか?つまり宇宙初期の状態を実験室で再現できないか? そのような試みが考えられました。実際に実験は行われ、我々はリトルバンを 作り出すことができたのです。
皆さんはそんな時代に生きているのです。

1号館8階に掲示してある紹介用のポスターのpdfファイルはこちら です。