通常、このような凝縮体の分布は空間的に一様で座標によらないと考えられてきましたが、 ある条件 の元─この場合は温度や密度─では実は一様でない結晶化した状態(別な言葉で言えば 密度波が存在した状態)の方がエネルギー 的に安定になることがわかってきました。そのような状態についてNambu and Jona-Lasinio 模型を用いて解析を行います。カイラル凝縮体が周期的に結晶化した状態の方がエネルギー的に 安定になるのはどんな条件の場合かについて明らかにします。
相転移の現象は統計力学的には非常に興味深く、その性質は1次、2次、cross overなどに分類されます。 特にQCDの場合は、ある温度、密度で(三重)臨界点と呼ばれる点が存在することが予言されます。 この点は1次相転移とcross overの境目の点であり、統計力学からその点付近で揺らぎの相関が発散します。 現在その点を特定する実験が計画されていますし、一方でこのようなクォーク物質の相構造を理論的に解析することは大変興味深いことです。あるいは宇宙初期の相転移について関係するかもしれません。 この研究ではまず臨界点の存在を線形シグマ模型を用いて評価した後、 その点の近傍では実験観測量にどのような影響を与えるか─具体的には粒子発生の揺らぎなど─を計算し予言を行います。
このような質量の大きい星は当然重力で収縮しようとしますが、それを内側から支えているのは中性子同士の間の反発力です(ここで陽子や電子は登場しないのは電荷を持っているため、 エネルギー的に損をするからです)。この二つの力が釣り合う場合にのみ、中性子星は存在できます。 つまりマクロな中性子星という天体の質量や半径を決めるのは、ミクロな中性子間の力(核力という)であり、我々が素粒子/原子核の加速器実験を通して決定した中性子の核力を用いると、 中性子星の性質が予言できることになります。 実際、現在知られている核力の知識と中性子星の観測は矛盾していません。
一方最近の原子核の実験から、ストレンジ量子数を持つ原子核系では今まで予想されていなかったほど強い核力(超核力と呼ぶ)が存在する可能性が指摘されました。 ストレンジというのはK中間子、ラムダ、シグマなどの素粒子が持っている量子数で、これらが中性子に混じって中性子星内に存在すると、超核力が中性子星の性質を変えてしまう可能性があります。 ここでは超核力の存在を仮定して中性子星の質量/半径などを計算し、それらが観測値と矛盾しないか検討して、果たして超核力の仮定が妥当なのか議論します。
この急激な膨張は極めて宇宙が小さかったときに起こったはずなので量子的な効果を無視するこ とはできません。 量子力学的な効果は古典的な期待値からの「揺らぎ」が0でないことを予言します。 実際背景輻射はほとんど一様ですが、わずかに揺らいでいることが観測されノーベル賞を受賞 しました。この揺らぎは宇宙初期インフレーション時に形成され、その影響が現在の宇宙に 残っていると考えられます。つまり揺らぎを知ることにより、インフレーションの詳細について 知ることができます。 背景輻射で観測されるパワースペクトルから、インフレーションに関するどのような情報が 引き出せるかを議論します。