研究テーマ



  1. 計算力学的手法による最適材料定数分布決定法の開発
    A Computational Mechanics Approach to the Determination of Optimum Distribution of Materials Properties in Composite Materials
     本研究は、金属基系複合材料や傾斜機能材料等、複雑な組織構造を有する先端材料の力学的評価・解析に基づいて、与えられた使用条件に対して力学的に最適な組織構造を導出しようとするもので、有限要素法、境界要素法等の既存の計算力学的手法に最適化理論や逆理論を適用して、機械的荷重や熱負荷に対する劣化・損傷が最も少なくなるような材料組成分布、強化相形状、積層構造等を導出し、新材料の設計・開発に資する知見を提供する手法を開発することを目的とする。

  2. 熱負荷を受ける多層積層板の順応力解析
    Computational Stress Analysis of Laminates Subjected to Heat Load
     前項の研究テーマは、逆解析的手法と位置付けられるが、本研究は、それとは相補的な関係にある順解析的研究である。本研究では、主に、金属基系複合材料、高分子系複合材料、傾斜機能材料等、複雑な組織構造を有する先端材料の順熱応力解析を効率良く行う計算力学的手法を開発し、異材境界部等における熱応力の特異性や熱変形挙動を明らかにすることを目的としている。

  3. 等価介在物法に基づく数値応力解析法の開発
    Numerical Equivalent Inclusion Method: A New Computational Mechanics Approach to the Stress Analysis of Inhomogeneities
     金属基系複合材料、高分子系複合材料等、多くの先端材料は、従来より一層過酷な条件の下で所望の機能を発揮すべく、分散粒子や強化繊維等の強化相を含有したり、積層構造を採用したりするなど、異方性・非均質性の傾向の強い複雑な微視構造を有している。
     これらの材料の力学的解析には、一般に、高度な数学的知識が必要となるが、本研究では、マイクロメカニックスで最も有効な方法の1つとして知られている等価介在物法に基づいた計算力学的手法(「数値等価介在物法」)を開発し、従来解析が困難だった、任意の弾性定数を持つ強化相や複雑な微視構造を有する材料の力学的解析を行うことを目的とする。

  4. 経年劣化構造物の健全性評価及び寿命評価法の開発
    Reliability Evaluation and Life Prediction of Aged Structures
     本研究は、実環境、腐食環境下における機械・構造物の長期使用で大きな問題となっている劣化による材料強度の低下を、定期検査や供用中検査等から得られる実用的な計測データから推測する手法を開発することを目的とする。実用的な構造物では、全面腐食による構造物表面の粗面化によって表面近傍の応力が高められ、疲労き裂の発生を促進し、強度の低下が引き起こされることがある。そこで、本研究では、腐食による構造物表面の凹凸化とその結果生ずる表面応力の分布との関係をスペクトル解析等によって求め、定期検査等で得られる構造物の表面形状のデータから、表面近傍に生ずる応力分布を逆解析的手法により直接推測し、長期使用中に劣化を受けた機械・構造物の余寿命予測や残存強度の予測を実用的な精度で行う手法の開発を試みる。

  5. 計算機シミュレーションによる材料の強度評価及び劣化・損傷予測の研究
    Computer Simulation Analyses of Stochastic Degradation and/or Damage in Structural Components
     本研究は、実機械・構造物の長期使用の際、又は先端技術分野においてしばしば遭遇するにも関わらず、その取扱いが困難であることから、従来十分な評価・解析がなされてこなかった複数欠陥による損傷・破壊過程の精度良い評価・解析を実現するため、従来の連続体力学モデルに基づいたモンテカルロ・シミュレーションにより、確率的な破壊・損傷過程の評価・解析を行う手法を開発し、その手法に基づいて、材料強度の評価及び(余)寿命予測を行うことを目的とする。
     本研究では、き裂や介在物等の欠陥ばかりではなく、塑性変形や相変態、物質移動等による「材質劣化」の概念を導入し、上記欠陥と材質劣化との相互作用を考慮することによって、経時的に材質の変化する材料の劣化・損傷過程のシミュレーション解析技術の開発を行う。また、近年、物性物理分野で注目を浴びている浸透理論を援用した劣化・損傷過程のシミュレーション・モデルの開発を試み、従来の連続体力学によらないモデルの可能性についても検討している。
     本研究では、上記のような巨視的な欠陥に加え、クリープ・ボイドや照射欠陥等、メゾスコピックまたはミクロスコピックなレベルの欠陥による劣化・損傷過程のシミュレーション技術の開発を行う。この場合の手法の1つとして、有力と考えられる分子動力学法等の粒子系シミュレーションモデルの適用可能性についても検討している。

  6. 離散化極限解析の微視力学への応用に関する基礎的研究
    A Study on Meso-scopic Mechanics of Materials Based on the RBSM; Rigid-Bodies-Spring Model
     宇宙往還機、新型原子炉、高効率熱機関等の先端技術分野においては、これまで以上に高温下における耐熱材料の粘弾性挙動(クリープ変形、応力緩和等)の解析が要求されている。このような高温強度問題においては、多結晶体の微視組織、特に、結晶粒の寸法や形状等が支配的な役割を果たしていることが多い。
     そこで、本研究では、有限個の剛体ブロックとそれを結合する分布ばね系からなる剛体−ばねモデル(RBSM)を用いて、粒界辷り、超塑性、高温強度の結晶粒径依存性等を解析し、高温環境下で実際に観察される多結晶金属、セラミック材料等の耐熱材料に特徴的な変形機構を解明することを試みる。

  7. 連続分布転位論に基づく疲労き裂発生機構の研究
    A Study on Fatigue Crack Initiation Based on the Theory of Continuous Distribution of Dislocations
     本研究は、平滑材の疲労においてしばしば遭遇する固執辷り帯(PSB)を刃状転位列で構成される複数の双極子でモデル化し、数理転位論に基づいて導出した積分方程式を数値解析的に解くことによって、平滑材表面からの疲労き裂の発生のコンピュータシミュレーションを行い、疲労き裂の発生機構を明らかにすることを目的とする。このシミュレーションによって、従来実験でしか求められてこなかったS−N線図の導出、また、従来明確な意味付けがなされていなかった疲労限と降伏応力との相関関係、さらには、第T段階き裂、結晶粒径等、材料の微視的な構造や組織に関係する各種因子の疲労き裂発生に及ぼす影響が明らかになるものと考えられる。

  8. 多軸応力下における先端材料の変形特性及び強度解析に関する研究
     Stress and Strength Analysis of Advanced Structural Materials Subjected to Multiaxial Loadings
     機械・構造要素が実環境下で受ける荷重は一般に多軸応力であり、従来の単軸応力場での試験データに加えて、実働環境を模擬した多軸応力下での疲労強度特性の把握は設計精度向上のために必要不可欠となってきている。
     そこで、本研究では、C/C系複合材料やTi合金等、特に航空機用として注目されている先端材料の2軸応力場での静的変形挙動、疲労き裂進展挙動等について高性能な2軸疲労試験機による実験的解析を実施するとともに、有限要素法や境界要素法等の計算力学的解析を行い、模擬実働荷重下での先端材料の変形特性及び強度発現機構の解明を目的とする。


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