この実験では、トンネルダイオードを用いた発振回路を使って、Self-excited Oscillation を理解する。
さらに回路方程式を解き、非線形の代表的な方程式、Van der Pol equationを導き、これを
実験とシュミレーション(Mathematica)の両方から
体感することが目的である。
発振回路とは、一定のエネルギーによって動かされているにもかかわらず、自発的に振動を起こす回路
(Self-excited Oscillator)である。また、このような振動を自励振動(Self-excited Oscillation)という。
今回の実験では、自励振動の中でも特徴のあるRelaxation Oscillation(弛緩発振)を観察することができる。
興味深い点はこの回路の振動は外力で周期運動させているのではなく、一定の直流電圧にも関わらず発振が観測される点である。
そして、この発振を起こしている主因であるトンネルダイオードの特性を調べることを通して、量子力学で学習したトンネル効果を実感すると共に、普段あまり触れられていない非線形現象に近づいてもらいたい。特に線形から非線形への遷移がどのように起こっているのかに注意を向ける
と面白いだろう。
トンネルダイオードという素子は、大変壊れやすいので、注意して扱うことが大切である。壊れる原因としては、電流を必要以上に流す、熱を加えるなどがある。実験手順に従っていれば壊れる可能性は少ないが、実験中に電流を 流したまま放置することはしないように。また、発振が観察できなくなった時や静特性が測定出来なくなってしまったときは、新しいトンネルダイオードを使用すること。但しその前に、TAや先生に相談すること。
トンネルダイオードは別名エサキダイオードといい1957年に江崎玲於奈氏が発明したものである。このダイオードの一番の特徴は順方向に電流を流したときにトンネル効果による負性抵抗が現れることである(江崎氏がトンネル効果によることを証明したことにより、その後、トンネル分光学が発達し、1973年にその功績に対して、ジョセフソン及びジェーバーとともに江崎氏にノーベル物理学賞が授与された)。また、このトンネル効果によって、トンネルダイオードはトランジスタの周波数特性をはるかに凌ぐ領域(マイクロ波〜ミリ波の領域)を示し、増幅器や発振器や高速論理回路などに優れた性能を発揮している。