研究紹介

研究分野: 生物物理化学,分子生物学,構造生物学



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研究テーマ:生体分子の分子認識機構の解明

 当研究室では、タンパク質やDNAなどの生体分子が他の生体分子と相互作用しながら営まれる生命現象を、生命化学的視点から解析する研究を展開しています。
 核酸化学的手法・組換えDNA手法・タンパク質化学的手法などを駆使して生体分子を自ら調製し、分光学的手法で生体分子の高次構造を解析したり、熱力学的手法・速度論的手法・電気化学的手法などで生体分子間相互作用の物性を解析したりします。また、分子生物学的・遺伝学的手法などで生体分子の機能を解析する研究にも積極的に取り組んでいます。
 当研究室の研究分野は境界領域であり、物理化学・生物化学・分子生物学・遺伝学を中心とした幅広い方法でアプローチするため、いずれの分野に興味がある人でも参画できます。



(T)三本鎖核酸に関する研究

(a)三本鎖核酸形成の研究と人工的遺伝子発現制御への利用
 二本鎖DNAに一本鎖核酸が結合すると、三本鎖核酸が形成されます。外部から一本鎖核酸を加えることにより、遺伝子発現制御領域に三本鎖核酸が形成されますと、この遺伝子発現制御領域に本来結合するべき転写制御因子などが結合できなくなり、下流の遺伝子発現が制御されます。このような人工的に遺伝子発現を制御する方法がアンチジーン法として注目されています。しかし、三本鎖核酸は酸性で安定に形成されますが、中性では不安定です。このため中性の生体内で三本鎖核酸をそのまま使用することはできず、生体内で人工的に遺伝子発現を制御する際の障害となっています。
 本研究では、どのようにすれば中性でも安定に三本鎖核酸を形成できるかを開発すると共に、三本鎖核酸形成を用いて生体内で人工的に遺伝子発現を制御する方法を確立し、変異がある癌遺伝子など発現することが好ましくない遺伝子の発現を制御する創薬に展開することを目指しています。

(b)三本鎖核酸結合タンパク質の研究
 遺伝子発現制御領域の二本鎖DNAの一部がほどけて生じた一本鎖核酸が、他の二本鎖DNA領域に結合して三本鎖核酸を形成し、形成された三本鎖核酸の下流の遺伝子発現が制御される可能性が指摘されています。また、三本鎖核酸に特異的に結合する蛋白質が近年同定されています。しかし、生体内におけるこの三本鎖核酸形成および三本鎖核酸結合タンパク質による遺伝子発現制御機構は全くわかっていません。
 本研究では、三本鎖核酸結合蛋白質の3次元構造を調べると共に、三本鎖核酸結合蛋白質が三本鎖核酸をどのように認識するかを解明します。そして、通常の二本鎖DNA結合蛋白質が二本鎖DNAを認識する様式と比較します。これらを通して、従来全く未知であった、三本鎖核酸や三本鎖核酸結合蛋白質の生物学的意義を明らかにすることを目指しています。



(U)テロメアDNA結合タンパク質に関する研究

 染色体の末端領域をテロメアと呼びます。テロメアは細胞の老化と共に短縮し、生体内時計としての役割を果たしています。細胞が癌化、不死化するとテロメアの短小化が停止し、伸長するようになります。このようなテロメアの長さの調節には、テロメラーゼ(RNAとタンパク質との複合体)と共に、テロメアDNAに特異的に結合する蛋白質が関与しています。酵母や哺乳類などでテロメアDNAに特異的に結合する一連の蛋白質が近年次々と同定されています。しかし、テロメアDNA結合蛋白質によるテロメアDNA認識の分子機構はほとんどわかっていません。
 本研究では、テロメアDNA結合蛋白質の3次元構造を調べると共に、テロメアDNA結合蛋白質がテロメアDNAをどのように認識するかを解明します。また、テロメアDNA結合蛋白質がテロメラーゼと相互作用する様式についても解明します。これらを通して、テロメアDNA結合蛋白質やテロメラーゼがテロメアの長さを調節する機構を明らかにすると共に、細胞の老化や癌化の機構を明らかにし、細胞の癌化を人工的に制御する制癌に展開することを目指しています。



(V)ゲノム科学に関する研究

(a)機能が未知のままの遺伝子の機能推定方法の研究
 近年、様々な生物の染色体のDNA配列の解読が終了し、多数の遺伝子が同定されています。しかし、DNA配列が既知になったにもかかわらず、機能が未知のままの遺伝子が多数残されています。このような機能未知の遺伝子の機能を明らかにすることは、産業応用などを考える上で、今後重要になってくると思われます。
 本研究では、機能未知の遺伝子の発現を人工的に活性化・抑制し、その時の生物の表現型を解析することにより、機能未知の遺伝子の機能を推定する方法を開発し、ゲノム情報の有効活用を目指しています。

(b)一塩基多型(SNP)の効率的な検出方法の研究
 最近、人の染色体のDNA配列の解読が終了しました。生存に必須なDNA配列はすべての人で共通ですが、そうでないDNA配列は人により微妙に異なり、この多様性を「一塩基多型(Single Nucleotide Polymorphism: SNP)」と呼んでいます。一塩基多型は、人がある病気に感染しやすいかどうか、人が薬を飲んだ時に効きやすいかどうかなどに関係しており、世間一般で「体質」という言葉で表現される内容に関連しています。この一塩基多型を効率的に検出することは、個人個人に応じた医療(テーラーメイド医療)を考える上で、今後重要性が増してくると思われます。
 本研究では、金属イオンとDNAとの特異的結合を利用して一塩基多型を効率的に検出する方法を開発し、「体質」を簡便に診断する方法の確立を目指しています。



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