何に使えるのか?

 フォトリフラクティブ効果に関して最もよく問合せがあるのは、「何に使えるか」という点である。現時点では、有機フォトリフラクティブ材料が利用されている市販製品は存在しない。材料を作る側からすれば、具体的なアプリケーションがはっきりしていればそれに対応する材料をつくるところであるが、アプリケーションを作る側からすれば「良い材料があれば考えましょう」というところであろう。フォトリフラクティブ効果には、干渉光にしか応答しないことや弱い連続発振レーザーで充分であることなど、光化学反応や他の非線形光学効果には無い優れた特徴がある。応答が遅いことがネックとなっているが、この点が克服されれば具体的なアプリケーションへの用途が一挙に生まれるであろう。これまでに提案されている応用技術には、記録、動的ホログラム(位相共役波発生)ファイバーからの情報取り出し、光演算などがある1)、2)、5)。フォトリフラクティブ効果は光が干渉しない限り反応しないので、キューブ状のフォトリフラクティブ記録媒体に2本のレーザーで書き込みを行えば、レーザーが交差した点だけで記録が起こる(図-1)。これは材料への大容量の情報記録に応用できる。また、レーザー光の交差点にはホログラムが形成されるため、画像情報をこの点に書き込むことができる。したがって、フォトリフラクティブ材料でキューブ状の記録媒体を作れば、立体中の各点に「ある」「ない」という情報を書き込め、さらに「ある」点にはホログラム情報を載せることができるため、記録情報量は飛躍的に大きくすることができる(かもしれない)。この目的のためには屈折率格子が高速に形成され、しかも光を切った後でも屈折率格子が長期間安定に固定化される材料の開発が必要である。また、屈折率格子が全く固定化されない材料でも、高速に応答するのであれば位相共役鏡として高い価値を持つ4)。位相共役鏡は光で2次元情報を送る場合の画像歪みを除去するために有用である(図-2)。光に2次元情報(画像)を乗せようとする場合、画像表示素子に光を透過させる。この時に表示素子の屈折率分布によって画像に必ず歪みが生じてしまう。位相共役鏡によって信号光の位相共役波を発生させ、表示素子を逆向きに伝播させれば光信号から歪みを完全に取り除くことが出来る。また、フォトリフラクティブ効果では、光が干渉する場合にだけ変化が生じるので光演算回路を形成することもできる。