Photorefractive Effect

 フォトリフラクティブ効果とは「物質が光を吸収して屈折率が変化する現象」のことです。屈折率の変化というと漠然とした印象を受けると思いますが、これはホログラムなどの画像形成や光の伝播制御に直接応用することができる有用な現象です。屈折率の大きさは物質に固有のものですが、電界を印加すると屈折率が変化する特殊な物質も知られています。このような現象を電気光学効果といいます。光を吸収することによって屈折率が変化する現象としては,光化学反応,フォトクロミズム,光熱効果等いろいろなものが挙げられますが,光吸収によって物質内部に電界が発生し,この電界で電気光学効果が生じて屈折率が変化する現象のことを特にフォトリフラクティブ効果と呼びます。フォトリフラクティブ効果の大きな特徴は、干渉する光にしか反応しないということです。単純に光を当てるだけではだめで、物質中で光を干渉させなければフォトリフラクティブ効果は発生しません。フォトリフラクティブ効果は、1966年に無機結晶で発見されました。1990年に有機化合物でも生じることが見出され、現在も活発に検討が行われています。有機フォトリフラクティブ材料は、光導電性化合物電荷捕捉剤電気光学効果を示す化合物という3成分から構成されています。光導電性化合物は普段は絶縁体ですが、光を吸収すると電気を流すようになる性質があります。そして電荷捕捉剤は電子を捕まえるものです。非線形光学色素は電界によって屈折率が変化します。この様な3つの性質をもった物質内部でレーザー光を干渉させると、屈折率の高い部分と低い部分とが交互に積み重なった「屈折率格子」が形成されます。このメカズムを図1を参照しながら説明しましょう。


まず干渉縞の明るい部分で光導電性化合物が光を吸収します。すると、光導電性化合物から電子が飛び出して電荷捕捉剤に捕らえられ、光導電性化合物には正電荷(ホール)が残ります。電子は捕捉剤に捕らえられるので干渉縞の明るい部分から他に動くことはできませんが、正電荷は熱エネルギーによって物質全体に拡散していきます。すると、明るい部分には負電荷(電子)が溜まり、暗い部分には正電荷が溜まることになります。この状態を電荷分離状態といいます。電荷分離状態では負電荷と正電荷の間(つまり明るい部分と暗い部分との間)に熱エネルギーとつりあう大きさの電界が生じています。この電界によって電気光学効果が生じて物質の屈折率が変化します。干渉縞の明るい部分と暗い部分の間のところの屈折率が変化するので、屈折率の格子縞が形勢されるのです。ここで、屈折率の変化は干渉縞の明るい部分と暗い部分の中間のところで生じることに注意してください。このため,屈折率格子は干渉縞から /2(干渉縞の間隔の1/4)だけ位相(格子の位置)がずれています。この位相のずれが非常に重要で、これがフォトリフラクティブ効果の特徴の一つです。この屈折率格子はレーザー光を特定の方向に回折することができます。そしてレーザー光が物質中で干渉している場合にだけ屈折率格子が形成されるので、様々な光演算や光信号からの位相歪みの除去、さらにはホログラム記録などに応用することができます。


もっと詳しく知りたい方は
「液晶フォトリフラクティブ材料」, 佐々木健夫, 日本液晶学会誌, 6, 168-180 (2002).
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