航空・宇宙分野の研究

1.着氷現象の数値シミュレーション

Numerical Simulation of Ice Accretion Phenomena

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 数値シミュレーションを用いて航空機で発生する着氷現象の予測を行っている。航空機の着氷現象とは、気温の低い上空を飛行する際に大気中の過冷却液滴が翼に氷として付着する現象である。飛行性能の低下を引き起こし運航に危険を及ぼすため、正確な予測が出来れば安全な運航が可能となる。着氷現象は様々な大きさの過冷却液滴が原因となるが、液滴が大きい場合、付着する氷の量が増えるため特に危険である。そこで、液滴が大きい場合に発生する特有現象に注目して、氷形状の再現を目指している。また、特有現象が氷形状にどのような影響を与えるか研究している。

2.航空機の防氷システム技術の数値的研究

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 氷点以下の環境においては、航空機の表面に氷が付着する“着氷”という現象が発生する。着氷現象は、航空機の性能の低下を招くため、航空業界が抱える問題のひとつとなっている。例としてB787などの近年の航空機においては、様々な着氷対策が講じられている。特に、電熱ヒーターによる防氷策は、環境面・機能面などの点で優れている着氷対策として注目されている。しかし、着氷を防ぐための最適な温度設定や設置範囲などのより実務的な知見はあまり得られていない。従って、本研究では着氷のシミュレーションによりそれらの知見を得ることを目的としている。

3.無尾翼火星飛行機の翼型の多目的設計探査

Multi-Objective Design Exploration of Airfoil for Tailless Airplane

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 火星は地球外の移住地として有力な候補であり、世界で火星の探査が行われている。今までは火星ローバーや人工衛星などを使用しての調査が主に行われていたが、新しい方法として飛行機を使用した探査が考案されている。現在計画されている火星飛行機は尾翼を持った一般的な飛行機の外形をしているが、水平尾翼を持たない火星飛行機は形状が単純であり、火星への運搬を行いやすいという点から火星飛行機の候補の1つとして考えられている。本研究では、数値計算と進化計算を使用して、水平尾翼を持たない火星飛行機に適した翼の特徴を探査する。

4.超音速ジェットから発生する音響波に関する実験的研究

Experimental Study on the Acoustic Waves Emitted from Supersonic Jet

 ロケット打ち上げ時、ロケットエンジンの排気(超音速ジェット)から、非常に強い騒音(音響波)が発生する。この音響波はペイロードを加振し、破壊する恐れがある。現状の音響振動試験は、音響波の予測精度が十分ではなく、膨大なコストを擁す。これを受け、CFDによる音響波予測の研究が盛んに行われている。当研究室では、スーパーコンピュータを用いた大規模計算によって実物に近い超音速ジェットを解析し、より正確に音響波を捉えることを目指している。また、実際の物理現象と現状のCFDの差異を検証するために、実験的アプローチも行っている。JAXA/ISAS内の吸込式小型超音速風洞を用いて、高精細な超音速ジェットの実験データを取得し、CFDのデータと比較することで、音響波発生メカニズムの解明を目指す。

5.ジェットエンジン・消音パネル内流れの数値的研究

Flow Field Analysis on Acoustic Panel of Fan Duct in Jet Engine

 ターボファンエンジンを有する航空機には、騒音対策としてダクト内に消音パネルが設置されている。しかしこの消音パネルは未だ技術者の経験に基づいて設置されており、詳細なメカニズムは解明されていない。しかし実験による解析は非常に大きな設備を有する上、消音パネル内部などの詳細な流れを見るのは困難である。そのためコンピュータ解析により詳細な流れ場を明らかにすることが目的である。主流ダクト内と消音パネル内のマッハ数が著しく異なるため、従来の圧縮性ソルバーでは解析が困難である。故に前速度対応型スキームを用いることでこの問題を解決し、実際の運航条件における解析を試みている。