Otsuka Laboratory

大塚研究室の研究内容について



キーワード:分子会合体/バイオコロイド/高分子界面/バイオマテリアル

本研究室では、ナノ材料と生体との界面現象を解明し、さらに積極的に生体機能を操作できる物質の創出を目指しています。例えば、生体信号を的確に検知し、かつ増幅することのできる「分子インターフェース」機能を有する材料界面を創出し、生体物質(細胞・ウイルス・毒素など)との応答機構を明らかにすることによって、 高感度診断や組織工学(ティッシュエンジニアリング)への応用を目指します。また、大きさや形状の制御されたナノスケールの金属・半導体粒子・分子会合体を合成し、 それらの生体認識機構を調べることによってガンをはじめとする難病の検出・イメージング、化粧品原料への応用を目指します。具体的な研究内容は以下の通りです。

生体適合性に関する研究

人工血管、人工臓器、人工骨やコンタクトレンズなど、生体に埋め込まれて使用される材料は生体適合材料です。これらの材料には、毒性がないことはもちろん、拒否反応を起こさせず、しかも長期にわたって劣化や分解などが行われないような“生体適合性”という性質が求められます。 高分子材料が血液や組織といった生体成分と接触すると、初めに生体成分中の水分子が高分子材料表面に吸着し、次いでこの水分子を媒介としたタンパク質や細胞の接着を起点として異物反応が起こります。したがって、高分子材料表面の生体適合性を考える上で、その最表面における水の構造や高分子の水和構造に関する考察は欠かすことができません。 親水性高分子であるポリエチレングリコール(PEG)を一セグメントに有する両親媒性ポリマーは固液界面に自己組織化膜を形成するため、この水和構造特性の示す生体適合性について精査しています。この両親媒性高分子は水中でナノ粒子コロイドミセルを形成する特徴を有するため、 金属配位子を導入した金属錯体高分子では、これらの自己会合特性や貴金属ナノ粒子の合成について調べ、その触媒活性や抗癌特性について検討を行います。また、金属錯体高分子の遺伝子やタンパク質との生体特異的吸着を解析し、ドラッグキャリアや抗癌剤としての応用を目指します。

高分子界面活性剤の研究

界面活性剤は両親媒性物質であり、分子集合体を形成することが知られています。これらの分子集合体は界面活性剤の構造に大きく依存します。しかし、分子集合体の構造と特性との関係は十分に理解されておらず、その相関性を明らかにする必要があります。 そこで、新規のブロック型、グラフト型高分子共重合体を合成し、それらの分子集合体としての特性ならびに構造的性質を光散乱、NMR、界面粘弾性などの手法から調べます。 会合体コアには水中から疎水性物質を取り込む性質(可溶化)があるので、これを利用したドラッグデリバリーシステム(DDS)について検討します。

例)新規なブロック型、グラフト型高分子共重合体の合成・細胞や病巣を検出可能なイメージングシステム(Theranostics)、癌細胞へ受動輸送 /能動輸送が可能なナノ粒子コロイドの設計など

貴金属ナノ粒子の研究

大きさや形状の制御されたナノメートルサイズの金属・貴金属粒子を、上記で合成した高分子型界面活性剤を用いて作製し、それらのナノ物性、生理活性機能について調べます。また、金属錯体を形成可能なブロック型、 グラフト型高分子共重合体を合成し、新規な金属錯体高分子について触媒・生理活性機能を調べています。さらにこれらの自己会合特性や金属ナノ粒子の合成について調べ、その抗がん剤特性について検討を行います。

例)新規な高分子型金属錯体の合成、遺伝子の増幅抑制と抗がん剤機能を有する高分子型金属錯体、触媒活性の高い金属・貴金属ナノ粒子の精密合成,近赤外線を用いる温熱治療技術

細胞の自己組織化に関する研究

高分子の形成するマトリックス(ハイドロゲル)を細胞の三次元培養足場材料として開発し、細胞のインジェクタブルな生体内組織(スフェロイド)化を誘導します。また、高分子の形成する薄膜表面の性質を調べ、その表面特性を利用した細胞の自己組織化について調べます。作成する細胞の三次元会合体は生理機能が生体内に近いという特徴をすでに解明しているので、新薬のスクリーニング、再生医学としての利用について検討を行います。

例)高分子ゲルを用いた再生医療、肝臓・骨/軟骨・皮膚再生を目指した医工連携、細胞の自己組織化の誘導と遺伝子発現・タンパク合成解析、細胞の三次元会合体形成と新薬スクリーニング



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