東京理科大学 理学部 応用物理学科

樋口研究室

研究紹介

研究分野

ナノイオニクスデバイス/金属材料物性

専攻分野

酸化物イオン伝導体のナノ物性とデバイス応用
準結晶合金の基礎と応用

研究室概要

 当研究室では,酸化物ナノ構造膜および準結晶の新規材料開発とデバイス応用を目的とした研究を進めています。電気を流さない酸化物誘電体にキャリアー(異なる価数を持つ元素)をドープすることで,半導体的な電子的挙動とイオン伝導性を示すようになります。このような物質は,”ワイドギャップ酸化物半導体”と呼ばれ,「ナノイオニクス」という新たな分野として,近年,基礎研究や応用研究が活発化しています。
 酸化物半導体をナノ構造化・多層化(ヘテロ構造)することで,電子・ホール伝導性に加え,イオン伝導性を飛躍的に向上させることができます。さらに、この挙動を電子構造というミクロなレベルで解明し,半導体デバイス・欠陥化学の概念を応用することで,金属-半導体界面で生じるショットキー障壁を意図的に制御できます。

本研究室では,以上のコンセプトに基づき、

  1. 中常温域で作動する薄膜型固体酸化物燃料電池
  2. 人間の脳を模倣する脳型メモリー素子
  3. 全固体リチウムイオン電池の高性能化
  4. 全固体酸化還元および全固体電気二重層トランジスタのスイッチング素子
  5. 準結晶の合金開発と構造解析および物性評価

等の研究テーマを軸として研究を進めています。
 卒業研究では,葛飾キャンパスで整備された研究室において,当研究室独自のセラミックスおよび薄膜作製技術を用いて酸化物半導体薄膜とデバイス構造を作製し,各種伝導体の基礎物性からデバイスとしての特性を広く研究することになります。

研究テーマの一例

1. 酸化物電解質/電極を用いた固体酸化物燃料電池のデバイス化の研究 (詳細はこちら

 中高温域(300~700℃)で作動する固体酸化物燃料電池の実現を目的として,酸化物半導体のプロトン伝導性と電子-イオン混合伝導性を活かした電解質/電極へテロ接合界面(三相界面)を作製し、電極反応機構を研究します。そして,酸素欠陥・キャリアー・結晶構造を系統的に制御することで,安定かつ高効率な発電特性を実現するための,条件の最適化を行います。

2. 電子-イオン混合伝導体を用いた人間の脳を模倣する脳型メモリー素子(詳細はこちら

 酸化物イオン伝導体薄膜が持つ電子-イオン混合伝導性を活かして、Pt/酸化物イオン伝導体膜/Ptのクロスポイント構造デバイスを作製し、パルス電圧や時間間隔を変えた信号を入力することで、その電流応答より、人間の脳の長期記憶・短期記憶・忘却などの諸特性を実現する研究を行っています。

3. 全固体リチウムイオン電池の高性能化(詳細はこちら

 全固体リチウムイオン電池の充放電特性を改善するために、固/固界面の定量評価法を確立させ、種々のリチウムイオン伝導性を多種多様に積層させることで、より一層の高性能化を図っています。

4. 全固体酸化還元および全固体電気二重層トランジスタのスイッチング素子(詳細はこちら

 酸化物イオン伝導体を電解質膜に用いた全固体酸化還元素子および電気二重層トランジスタを作製し、抵抗スイッチング素子や物理リザバーへの応用を目的とした応用研究を行っています。

5. 準結晶の合金開発と構造解析および物性評価(詳細はこちら

 準結晶は、準周期長距離秩序と呼ばれる特異な構造秩序を持った物質です。金属元素からなるにも関わらず、高い電気抵抗、負の抵抗温度係数を示します。しかし、原子的構造が解明されている準結晶は極僅かであり、構造に基づく物性の理解を得るにはさらなる研究が必要です。本研究では、新しい準結晶を探索し、その構造を決定します。