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最近の研究
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有機合成化学を基盤として不斉自己触媒反応および不斉触媒の研究を主要テーマにとりあげています。さらに、発展として不斉の起源の解明に迫る研究も行っています。研究は、有機合成化学、有機反応化学、有機金属化学、錯体化学、光化学、高分子化学など多岐にわたる手法を駆使して行っています。
キーワード:
不斉自己触媒、不斉自己増殖、不斉の起源、自己修復、自己改善、ピリミジルアルカノール、ジアルキル亜鉛、不斉触媒、光学活性、不斉合成、エナンチオ選択的合成、有機合成化学、光学異性体、鏡像異性体、機能性材料、生命の起源、キラル、キラリティー、不斉増幅、有機金属化合物、有機金属錯体、デンドリマー、高分子触媒、均一系触媒、不均一系触媒、不斉認識、不斉識別、省エネ、省資源、環境調和型触媒、不斉有機化合物、不斉無機結晶、キラル表面、円偏光、自発的不斉合成、絶対不斉合成、水晶、遠隔不斉誘導、不斉誘起
(1)不斉自己触媒反応の研究
生体関連化合物の多くは、また機能性材料等には、L-アミノ酸のように可能な光学異性体のうち一方の絶対立体配置を持つ光学活性な分子が多いことが知られています。したがって、望む光学活性分子を不斉合成する方法、とりわけ不斉触媒反応の開発が重要な課題であります。従来の不斉触媒反応は、生成物とは構造が全く異なる触媒を用いるものであり、反応後に触媒を生成物から分離し回収する操作が必要です。これに対し、不斉自己増殖反応では、生成物が不斉自己触媒として作用し、自己と同一構造および同一立体配置をもつ分子を与えます。本反応は、異型の不斉触媒の使用が不要、かつ触媒と生成物との分離操作が不要である省資源・省エネ型の次世代の不斉合成反応と言えます。
また、光学活性分子が自己増殖中にその光学純度を向上させる不斉化学進化的自己増殖反応は、初めにごく少量の低光学純度化合物があれば、不斉自己増殖反応で量を増加させながら光学純度を著しく向上させるものであります。これは、自然界に例えばL-アミノ酸のみが存在するようになった理由を解明するための手がかりを与えてくれるでしょう。さらに、不斉化学進化的自己増殖反応を行う分子は、自己複製(増殖)とキラリティーという生命の二つの重要な特質を備えています。本研究室では世界に先がけて以上の特質を持つ光学活性分子、ピリミジルアルカノール、キノリルアルカノール、ピリジルアルカノールなどの研究を行っています。
(2)不斉の起源の研究
生命の世界はL-アミノ酸に代表されるように不斉です。したがって最初の有機化合物の不斉は、いかに発生したのかが大変興味深い問題です。不斉の起源として円偏光などが提唱されているが、それにより直接もたらされる光学純度は低いものです。
当研究室では最近、不斉自己触媒を応用して光学純度を向上させることにより、有機化合物の円偏光による低光学純度と生命の世界の高光学純度の関連を明らかにしました。このように、不斉の起源のメカニズムの検証および光学純度が向上する自己増殖反応について研究しています。円偏光というキラルな物理力を用いて、(キラル物質を全く用いず)不斉自己触媒反応と組み合わせることにより、高い光学純度の有機化合物を不斉合成する研究も行っています。また、水晶(水晶は光学活性体で、右水晶と左水晶が存在する)が不斉源となり、高い不斉収率で光学活性有機化合物を与えるユニークな反応を初めて見出しました。そこで、キラルな他の無機物質(塩素酸ナトリウム)等を不斉源に用いる不斉合成反応を行います。さらに、不斉源を全く用いない自発的不斉合成、絶対不斉合成の研究も行っています。
(3)デンドリマー型不斉触媒の研究
不均一系不斉触媒は生成物との分離が容易ですが、それを炭素?炭素結合を生成する高エナンチオ選択的な反応へ適用した例はきわめて少ない。独自の高選択的な不均一系不斉触媒、特に明確な分子量をもつキラルなデンドリマーを設計・合成する研究を行っています。キラルなデンドリマーは、対称性をもつ美しい形の分子です。さらに、(1)に関連し、不斉自己増殖するキラルデンドリマーの創製研究も行っています。
(4)新規不斉触媒の設計と合成
種々の不斉合成反応(不斉アルキル化反応など)を行う新規不斉触媒を設計かつ合成します。なお、当研究室で設計・合成した不斉触媒の一つは、医薬品エファビレンツの不斉合成における不斉配位子としても用いられています。また、環境・資源に配慮した無溶媒不斉合成も行っています。