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Hadron Physics Group, TUS

東京理科大学理学部第1部物理学科 ハドロン物理研究室

卒業研究についてGraduation research
 

本研究室はハドロン物理を中心にして素粒子物理学、原子核物理学、および関連する宇宙物理学の理論的研究 を行っています。 1号館8階の真ん中あたりにありますので、興味がある人は立ち寄ってみてください。
研究内容の紹介や今年の卒研テーマは研究活動のページにアップされていますので、そちらを参照して下さい。ここでは理論研究室に興味がある学生の皆さんに対して、「研究室が皆さんに求めるもの」と 「研究室の日々の活動」について説明します。
 研究内容について紹介した1号館8階のポスターはこちら

どんな人に来て欲しいか?

 研究室を選ぶ上で最も重要な点は、当たり前ですがテーマに「興味がある」ということ です。
とは言いつつも、「興味がある」ということと「その研究ができる」ということは常にイコールではありません。最低限の素地を1から3年生 の間に身につけておかないと、研究が楽しくなくなってしまいます。

 この研究室の主な道具は相対論的場の理論と呼ばれる枠組みです。勘違いする人もいるのですが、相対論と量子力学を学んでいれば十分というわけではありません。 解析力学、電磁気学、物理数学などの基礎はもちろんですが、統計力学、熱力学、物性論( 超伝導や磁性)の考え方は いろいろな場面で特に重要な役割を果たします。

 素粒子の分野というと一見そういった物理とは関係ない気がします。例を挙げて考えてみます。 素粒子の世界とは、単に基本粒子がいくつかあってその組み合わせを議論するという単純なものではありません。 実のところ「真空とは何か」を記述することに大きなポイントがあります。 真空とは何もない世界ではなく、実は無限の数の粒子が「何か」を形作っているものと考えます。当然真空のエネルギーはゼロではなく、可能な真空が様々存在し、その中で最低エネルギーの真空が選ばれると考えます。さらに興味深いことに、この無限自由度の真空に温度を与えたらどうなるか?、 あるいは、真空に素粒子を一つ置いたら真空自身はどのように変化し応答するのか?そういった ことも自明ではありません。このような現象が、私たちの世界の時間発展を決めています。 同じような話は、電磁気(誘電体)や物性論で聞いたことがあるはずです。

 素粒子関係の物理に興味があって、相対論やゲージ理論といった言葉だけに反応する人もいますが、それらは単なる道具の一つです。指導原理を与えてくれますが、実際の物理現象を理解するヒントになることはあまりありません。現象を理解する上では、熱統計力学や物性論に含まれている様々なアイデアを学ぶことは極めて重要なことだと思います。 以上の例からもわかるように幅広く学習しておくことが重要です。

 逆に「興味がない」けど、「よくわからないし、楽そうだし、大学院入試の勉強も 出来そうなので理論の研究室を考えている」 という人がいるならば、それは考え直して下さい。 理論の研究室は「読んで、計算して、議論して」の繰り返しです。 興味がないことについて、そんな単調なことの繰り返しは苦痛でしかありません。 研究室は、本や論文を読み、自分で手を動かして計算し、それについて仲間と議論する場です。 サークル活動の場でも遊び場でもありません。研究室の仲間で楽しく過ごすことは確 かに 大事なことですが、本末転倒になるようでは困ります。


進路とどんな関係があるか?

  • 「理論の研究室は大学院に進学する人向け」と考える向きがあるかも しれません。現実的に、卒研生の中では素粒子、原子核、宇宙の理論の大学院進学を 希望する学生さんが半数以上です。 しかし、必ずしもそういう人だけを求めているわけではありません。もともと、 理論物理に興味があって物理学科に入学した学生さんは少なからずいると思います。 4年で就職するけれども、最後の1年は(例えば)素粒子について真剣に学びたい、と思う人がいれば歓迎します。 4年生で研究室に入り大学院修士に進学してから教員になる人も少なからずいます。
     同じ理由で、「実験系」の大学院に進学するつもりだけれども、4年生では 違うことをやってみたいという人も歓迎します。 将来直接的には役に立たないかもしれませんが、物理的なものの見方、問題に対する アプローチの仕方などを身に付けておくことは意義のあることだと思います。

     理論を学んで物理の研究者になってみたい、と考えている人もいる と思います。そういう人はもちろん歓迎します。しかし、道程は厳しいこと も知ってください(特にこの分野では)。 「自分はプロの研究者になる」という意識で、1年間の卒研に取り組んでもらい たいと思います。

研究室における活動内容

 勘違いする人もいますが、理論の研究だからといって家にこもって一人でやればよいということはありません。私は皆さんに「毎日研究室に出てきて、仲間と議論する」ことを要求します。 先にも書きましたが、理論の研究は「自分で論文を読み、計算し、それについて仲間と議論する」の繰り返しです。これが出来ないようなら、理論の研究はあきらめてください。 そういった生活のなかで、自分一人ではわからないような様々なことを得ることができます。 また、そういったことが可能になるような雰囲気を研究室に作ることも重要です。これは なかなか難しいことですが。

前期
 卒研を行うための準備として、全体のゼミと個別の興味に基づいたサブゼミを行います。 (したがって1週間に2、3回のゼミがあります)全体のゼミは相対論的場の理論の テキスト(英文)を輪講します。 これらのゼミについては予習して完全に理解する、もしくは分かるところと分からない点を明確にしてくる、ことが必要です。復習はほぼ無意味です。予習せずに話を聞いてわかるような簡単な話ではありません。研究をするということは、基本的には自分で一人で理解する作業です。誰かが教えてくれるのを待っているようではお話になりません。

 全体ゼミのテキストとしては「Relativistic Quantum Mechanics and Field Theory」(by F.Gross)を 用いています。個別ゼミのテキストとしては、「Subatomic Physics」(E. Henley), 「Quark-Gluon Plasma」(Yagi etal.) 「Lie Algebras in Particle Physics」(H.Georgi)などを用いています。

  前期で学ぶ事項は、これから研究を始めるに当たって基礎中の基礎です。 自分で手を動かして計算し本当に身につけることができるかどうかで、 後々大きな違いになってきます。漫然とテキストを読んで「わかった気になる」だけでは実は何も残りません。

後期 (9月中旬〜3月上旬)
 後期はゼミはありません(もちろん各自で実施してもらえばいいのですが)。2人で グループを作り研究を行います。 論文を読んで研究の背景、基礎の理解から始めて、理論的枠組みの計算、コンピュータを用いての 数値計算まで行います。 テーマについては、実際のところかなり難しいと思ってください。日常的に指導教員と議論を行います。「研究」ですから、指導教員はアドバイスはしますが、 教えることはありません。(指導教員が答を知っているようなら、研究とは言いません)先輩が作ったプログラムを動かせばよい、というわけでも ありません。ましてや、インターネットで検索したら出てくるようなことは ありません。「0から出発して、物理の最前線にどこまで到達できるか」、 そこに チャレンジしてもらいたいと思います。
 現実問題としてこの分野のテーマは必要となる知識が膨大です、皆さんがいかに頑張ろうとも最終的に満足のいく結果を得るのは難しいです。皆さんに得てもらいたいのは、研究の成果というよりも、研究を進めるための論理的思考法、方法論、姿勢です。もちろん研究のまとめ方や発表の仕方についても細かい指導があります。本当に意味のある半年間になると思います。




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