ハドロン内部のクォーク、グルーオンを調べる最も有効な方法は高エネルギーの仮想光子による非弾性散乱です。しかしQCDは非摂動的な相互作用をするため、small-x領域と呼ばれるグルーオンが支配的に寄与する領域の理解は特に難しいことが知られています。ここでは直接ゲージ重力理論であるQCDを扱わず、AdS/CFT対応と呼ばれる手法を用いて、5次元の曲がった時空における重力理論を用いて計算を行います。
得られた結果は陽子などの断面積を広い運動量領域で再現します。
強い電磁場などにより真空にエネルギーが加えられたときには、粒子・反粒子の対が発生すると考えられています。この現象はSchwinger効果と呼ばれています。高エネルギーハドロン散乱でクォーク、グルーオンが多重発生する現象もその一つと考えられており、近いうちに大強度レーザーを用いて実験で確かめられると信じられています。
一方、強い磁場が存在する物理系では量子異常によって生じる新しい現象が注目を集めています。その一つが、カイラリティ非対称な物理系で磁場と平行な方向に電流が流れるカイラル磁気効果です。このような現象の基礎的な面を解析的手法を用いて明らかにするとともに、初期宇宙におけるleptogenesisの輸送過程への応用などを研究しています。
通常はハドロンの中に閉じ込められているクォークも、高温、高密度など特殊な環境下では閉じ込めが壊れ自由に運動できるようになります。その状況下でのクォーク物質の性質を研究しています。そのような物質は、初期の宇宙や、高密度の天体内部に存在すると考えられています。近年は、
非一様なカイラル凝縮とそのゆらぎ
クォーク物質の強磁場下での性質
などについて研究を行っています。
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