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    神楽坂微分幾何学セミナー

2021年4月~2022年3月の記録

日時 : 2021年5月29日
場所 : Zoom によるオンライン開催
15:00~16:00
講演者 : 梶ヶ谷 徹 (東京理科大学)
講演タイトル : 非コンパクト型エルミート対称空間の同変実現

アブストラクト :

非コンパクト型エルミート対称空間
M=G/Kを、Mの接空間にK-同変に埋め込む一つの方法を、
K-作用の極性を用いて与える。応用として、Harish-Chandra埋め込みと呼ばれる有界領域への
正則埋め込みおよび
Di Scala-Loi-Roosの構成した標準的シンプレクティックベクトル空間への
シンプレクティック微分同相写像を統一的に再構成し、それらが
K-作用の極性を用いて特徴
付けられることを示す。また、この同変埋め込みによって、全測地的複素部分多様体や実形を
含む
M内のある特殊な全測地的部分多様体のクラスが、接空間内の線型部分空間として
実現されることを示す。さらにその「双対」として、コンパクト型エルミート対称空間の稠密な
開部分集合上からその接空間への正則及びシンプレクティック埋め込みが得られることを見る。
本講演の内容は、橋永貴弘氏
(北九州高専)との共同研究に基づく。
16:10~17:10
講演者 : 斎藤 俊輔 (東京理科大学)
講演タイトル :偏極トーリック多様体の相対安定性・不安定性
        の多面体的な十分条件について
アブストラクト : 

偏極トーリック多様体はその運動量多面体と11対応することはよく知られている。
この対応の下で、多様体の一様相対K準安定性/相対K不安定性という代数幾何学的な
条件は運動量多面体とその上の凸関数によって完全に記述することができる。
今回の講演では多様体の一様相対K準安定性を導く運動量多面体側の十分条件について
紹介する。また四ッ谷-ZhouによるトーリックFano多様体における相対K不安定性の
多面体的な十分条件と関連する結果についても紹介する。
講演の内容は新田泰文氏(東京理科大学)との共同研究に基づく。


日時 : 2021年7月24日
場所 : Zoom によるオンライン開催
15:00~16:00
講演者 : 濱中 翔太 (中央大学)
講演タイトル : スカラー曲率に関する各点及びある積分量が有界な閉多様体上の
        リッチフロー
アブストラクト : 
 
この講演では、ある幾何学的な量が定義された(時間の)区間上で有界な閉多様体上のリッチフローについてお話しする。リッチフローはHamiltonによって1982年に導入された幾何学的流で、それは与えられた多様体上のリーマン計量をそのリッチ曲率の方向に変形するというものである。Hamiltonは更に、与えられた閉多様体上の任意の計量に対してリッチフローの短時間解が一意的に存在することを示した。そこで次の問いとしては、与えられた初期計量に対して、滑らかなリッチフローの最大時間の近くでの挙動がどうなるかというものがある。Hamiltonは、有限の時間$T$が最大存在時間(滑らかなリッチフローとして伸ばすことのできる最大の時間)であることとそのフロー (M,g(t)) (t ∊ [0,T)) のリーマン曲率テンソルのノルムが M × [0,T) 上で有界であることが同値であることを示した。他にも、リッチフローがある有限時間を越えて滑らかなリッチフローとして拡張可能であるためのこのような十分条件は、例えば、リッチ曲率のノルムが M × [0,T) 上で有界であること(Sesumによる結果)やある幾何学量の積分で表される量が有界であること(Wangによる結果)などが知られている。更に、Di-Matteoは、このWangの結果を時間と空間の混合ノルムを用いた量に関するものへと拡張した。この混合ノルムはパラメーター (α, β) ∊ (1, ∞) で表されるものである。本講演では、このDi-Matteoの結果の特異な場合、特に次元が4で、(α, β) = (p, +∞) (p > 2)かつ (+∞, 1) に対応する場合にについて拡張した意味でのリッチフローの拡張可能定理についてお話しする。また時間があれば、 M × [0,T) 上でスカラー曲率が有界であるという条件についてもお話ししたいと思う。
16:15~17:15
講演者 : 櫻井 陽平 (埼玉大学)
講演タイトル :優Ricci流に沿う調和写像流に対するLiouville定理
アブストラクト :

 
本講演の内容は國川慶太氏(宇都宮大学)との共同研究に基づく.我々は以前,Perelmanの簡約幾何の観点から,優Ricci流に沿う熱方程式の解に対するLiouville定理を示していた.今回,ターゲットの空間を一般化し,調和写像流に対して拡張することに成功したのでそれを紹介する.我々のLiouville定理では調和写像流に対してPerelmanの簡約距離に関する増大条件を課す.ターゲットの空間が非正曲率を持つ場合,その増大条件はシャープである.一方,断面曲率が上から正の定数で押さえられている場合,それがシャープであるかは不明だが,時間が止まっている場合に限定すると(すなわち調和写像を考えると),Ecker-Huiskenの手法を用いることでほぼシャープなものに改良できることが分かる.ここではSchoen-Uhlenbeckにより構成された例が深く関わってくる.講演ではこの周辺の事情について詳しくお話ししたい.

  日時 : 2021年8月28日
場所 : Zoom によるオンライン開催
15:00~16:00
講演者 : 藤井 知輝 (東京理科大学)
講演タイトル : 平均曲率流のグラフトランスレーティングソリトンと等径関数
アブストラクト :

本講演では,エイーマン多様体M上の関数でそのレベルセットが等径葉層構造に含まれるようなものに関して,その関数の
グラフが平均曲率流のトランスレーティングソリトンであるための条件についてお話しする。このようなトランスレーティング
ソリトンは, M上の等径関数とある常微分方程式の解となる関数の合成関数のグラフとして与えられることが示せたので,
そのことについて詳しく紹介する。さらに, リーマン多様体Mn次元球面(n2)である場合, このようなトランスレーティング
ソリトンがとり得る形状に関して分類を行ったので, そのことについてもお話ししたいと思う。

16:15~17:15
講演者 : 富久 拓磨 (早稲田大学)
講演タイトル : Rarita-Schwinger作用素に関するいくつかのトピックについて
アブストラクト :

 
重力微子を表すRarita-Schwinger場と,それを記述するために用いられるRarita-Schwinger作用素は物理学において
研究されてきた.
いわゆるスピン3/2版のDirac作用素であるRarita-Schwinger作用素は,近年,数学においても研究が
行われている.
本講演では,Rarita-Schwinger作用素に関する結果

(1) コンパクト対称空間上のRarita-Schwinger作用素の固有値(本間泰史氏との共同研究)

(2) nearly Kähler多様体上のRarita-Schwinger場(大野走馬氏との共同研究)

について述べる.

 日時 : 2021年10月30日
15:00~16:00

講演者 : 高橋 雄也 (名古屋大学)
講演タイトル : 多角形のモジュライ空間と幾何学的量子化
アブストラクト :

多角形のモジュライ空間はケーラー偏極と実偏極両方を備えたシンプレクティック多様体と して知られている.本講演では,多角形のモジュライ空間において,ケーラー・実偏極それぞれに対 応した量子ヒルベルト空間$\mathcal{H}_{Kah}$,$\mathcal{H}_{re}$から
オペラッドの射$\mathsf{f}_{Kah}$,$\mathsf{f}_{re}$を構成でき,それらを比較することで
等式$\dim\mathcal{H}_{Kah} = \dim\mathcal{H}_{re}$が一般的な設定の下で得られることを
お話ししたい.このオペラッドの方法は,神 山(2000)が特殊な場合での等式$\dim\mathcal{H}_{Kah} = \dim \mathcal{H}_{re}$を得た際に用いた漸化式の方法の発展形
と見なすことができる
べる.

16:15~17:15
講演者 : 馬場 蔵人 (東京理科大学)
講演タイトル : Cayley射影平面に関するCalabi-Yau構造とBargmann型変換について
アブストラクト :

本講演では、Cayley射影平面のpunctured余接束上にCalabi-Yau構造が存在することを説明
する。さらに,その上の正則関数からなるある空間とCayley射影平面上のL2空間の間の
Bargmann型変換を構成する。この変換によってCayley射影平面上の測地流の量子化が
与えられる。 本講演は、古谷賢朗氏(大阪市立大学数学研究所)との共同研究に基づく
(arXiv:2101.07505)。


  世話人: 小池 直之,田中 真紀子,佐古 彰史,新田 泰文,馬場 蔵人,
        梶ヶ谷 徹,斎藤 俊輔, 竹内 司

  前神楽坂幾何学セミナーの記録につきましては
  こちら(2009年~2017年)こちら(2018年~2019年)をご覧ください。