河野 貴弘 | 乾性油の酸化による迅速な硬化
乾性油は、油絵の具やニスなどの原料に利用されています。 しかし、乾性油の硬化を観察する実験教材は知られていません。 一方、乾性油を含む油絵の具の硬化を促進する画用液“シッカチーフ”が市販されていますが、シッカチーフを用いても、乾性油の硬化には24時間以上を要します。 またシッカチーフは重金属を含むので、実験に用いると、廃棄物に対するケアが必要となります。 そこで本研究では、乾性油を素早く、クリーンに硬化させる方法を開発しています。 |
中村 将雄 | ジアゾカップリング反応をキーステップとするアセトアミノフェンの合成
本研究は、アセトアミノフェンの合成の実験教材化を目標としています。 通常この実験は、p-アミノフェノールまたはp-ニトロフェノールを出発物質として行われます。 p-ニトロフェノールはフェノールのニトロ化によって得られますが、副生成物としてo-ニトロフェノールができてしまいます。 そこで本研究では、フェノールのp位への窒素原子の導入法として、p-選択性の大きいジアゾカップリング法を利用することにしました。 中間体として得られる4-アミノアゾフェノール(p-ヒドロキシアゾベンゼン)のアゾ結合を還元的に切断すれば、p-アミノフェノールが得られます。 現在は、このステップに最適な還元法を探索しています。 |
早川 駿 | キチンおよびキトサン担持金ナノ粒子を触媒とする芳香族ニトロ化合物の還元
マリンバイオマスであるキチンおよびキトサンは、重金属イオンに対する高い吸着能力をもちます。 本年度は、キチンおよびキトサンに金(V)イオンを担持させた化合物を水素化ホウ素ナトリウムで還元し、担体上に析出した金ナノ粒子を芳香族ニトロ化合物の還元反応の触媒に利用して、その触媒活性を評価することをテーマとしています。 現在は種々のパラ置換ニトロベンゼンを基質とした基質一般性の検討を行っています。 ![]() |
上原 智 | 水銀触媒を用いないアルキンの水和
アセトアルデヒドの工業的な合成法は、かつては水銀(U)触媒を用いるアセチレンの水和法でした。しかし水俣病の原因となったこの方法は現在では全く行われておらず、高校化学の教科書でも反応が紹介されているのみで、実験教材として扱われることはなくなりました。 本研究では、水銀触媒を用いることなくアセチレンからアセトアルデヒドを合成する実験教材の開発を目標としています。現在はモデル反応として、フェニルアセチレンのアセトフェノンへの変換に取り組んでいます。 ![]() |
浦 公佑 | ホウ酸シリカゲルによるアルコールの脱水と炭素骨格の転位
アルコールの脱水は、アルケンの合成法として、高等学校の化学で学習されます。 この反応では、濃硫酸が一般に用いられています。 しかし濃硫酸を生徒実験に用いる場合、皮膚の薬傷や衣服の損傷の危険があります。 濃硫酸の代わりに十酸化四リンを用いることもありますが、環境上の規制の厳しいリン廃液が生じます。 本研究では、酸化ホウ素を担持したシリカゲル(ホウ酸シリカゲル)と硫酸塩の混合物を用いるアルコールの脱水反応のメカニズムを探索しています。 |
廣瀬 彰訓 | ヒドロキサム酸鉄(V)法によるプラスチックの識別
中学校理科、高等学校の化学あるいは科学と人間生活では、プラスチックについて学習し、種々のプラスチックを識別する実験が扱われます。 従来は密度や燃焼の比較、定性的な元素分析による識別が行われていましたが、プラスチックを有機化合物として捉えた官能基による識別法は知られていません。 私は、当研究室で見出された「陽イオン界面活性剤触媒を用いるエステルの呈色反応(ヒドロキサム酸鉄(V)法)」を適用し、特にポリエステル系プラスチックを識別する実験教材の開発を行っております。 |
小山内 皇樹 | ホウ酸シリカゲルを用いたp-ニトロフェノールの選択的な合成
フェノールはo,p-配向性をもちますが、一般にフェノールのニトロ化でp-ニトロフェノールを選択的に合成することは困難です。 本研究では、酸化ホウ素を担持したシリカゲル(ホウ酸シリカゲル)を用いて、p-ニトロフェノールの選択的な合成を目指しています。 この反応ではニトロ化試薬として金属硝酸塩水和物を用いる安全なニトロ化の方法を検討しています。 |
小林 里美 | ヨウ素の直接付加によるヨウ素価測定法の開発
油脂には構成脂肪酸の不飽和度によって、様々な用途があります。 この不飽和度は、ヨウ素価という指標によって比較されています。 高等学校では、発展的な学習としてヨウ素価について学びますが、現行のヨウ素価の測定法には、取り扱いが難しい一塩化ヨウ素を用いる点や反応に時間がかかる点など多くの問題点があり、高等学校でヨウ素価の測定実験は行われません。 本研究は反応系中でヨウ素を発生させ、これを活性化した上で油脂への付加反応に利用する安全且で便なヨウ素価測定法の開発を目的としています。 |
島村 茉莉 | 界面活性剤一体型酸化マンガン(W)を用いたトルエンの酸化
トルエンを酸化してベンズアルデヒドを得る反応は、嗅覚的な変化を伴う上に、生成物の検出において視覚的な変化も体験できる魅力的な実験教材になる反応です。 またトルエンの酸化されやすさを学習するという観点から、重要な反応です。 しかし古典的な実験法に従って実験教材として扱うには、高濃度の硫酸水溶液を使用すること、重金属廃液の処理、長時間の反応が必要なことなどの問題点があります。 本研究では界面活性剤一体型酸化マンガン(W)を利用し、上記の問題点を解消したトルエンの酸化実験の開発を目指しています。
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野神 沙織 | ヒドロキサム酸鉄(V)法を用いたエステルの構造異性体の識別
カルボン酸エステルは身近な香料の成分として、高等学校の化学あるいは科学と人間生活において扱われ、合成実験も行われます。 しかし、合成したエステルの検出法は臭気に限られています。 当研究室は、ヒドロキサム酸鉄(V)法を用いたエステルの検出反応の実験教材を報告しています。 私は、その過程で見出されたエステルの構造による反応性の相違を利用して、エステルの構造異性体を短時間で、簡便に識別できる実験教材の開発を行っています。 |
原田 翔太 | 電解ヨードホルム反応の教材開発
ヨードホルム反応は主に有機化合物の構造決定の手段として、高校化学の有機分野で学習されます。 しかし教科書記載の実験法には、水酸化ナトリウム水溶液による薬傷や加熱操作による火傷、有毒な単体ヨウ素の使用などのリスク要因があります。 本研究では、ヨウ化カリウム水溶液を電気分解することで塩基性ヨウ素ヨウ化カリウム水溶液を調製し、非加熱で進行するヨードホルム反応の実験教材を検討しています。 また基質にアセトフェノンを用いることで、カルボン酸の生成を視覚的に観察できる実験教材の開発を目指しています。 |