| 伊得 和音 | 中等化学教育における光に関する実験教材の開発
概要:化学発光の実験としてよく用いられるルミノール反応では塩基性条件下でルミノールを酸化すると励起状態の3−アミノフタル酸イオンが生じ,励起状態から基底状態へと失活する際に励起エネルギーの一部が化学発光として放出される。水溶液中のルミノール反応の場合,金属触媒の存在下でルミノールと過酸化水素が反応して430 nmの青白い発光を生じる。この反応では発光が数秒で消失するため,生徒の興味・関心を引く演示実験には適するものの探究的な学習には不向きである。化学発光を扱う探求的な実験教材は不足しており,生徒が化学発光現象を題材として科学的探究を実践できる教材開発が求められている。本研究ではDMSO溶媒中におけるルミノール反応の理学的な追求と探究的な実験教材の開発を行う。 |
| 阪本 真 | 混酸シリカゲルを用いるベンゼン、トルエンのニトロ化と位置異性体の識別実験
概要:ベンゼンに代表される芳香族化合物のニトロ化は重要な反応として高等学校「化学」の教科書に記載され,ベンゼンやフェノールのニトロ化は実験教材としても利用される。教科書に記載されているベンゼンのニトロ化は濃硝酸と濃硫酸の混合物である混酸を用いる方法であり,有害で危険性の高い強酸を扱うため学校現場で生徒実験として行うにはリスクが高い。本研究ではまず混酸シリカゲルを用いた反応系の基質を拡張するために,混酸シリカゲルを用いたベンゼンのニトロ化における最適な反応条件と実験方法を検討する。この実験方法を確立することにより危険性が高くて取り扱いの難しい試薬を生徒が扱うリスクを軽減でき,学校現場で安全かつ容易に反応の様子を観察できる実験として利用できることが期待される。また混酸シリカゲルを用いたトルエンのニトロ化を利用し,置換反応における配向性と生成する位置異性体の性質の違いを視覚的に識別できる実験教材の開発を目指す。 |
| 神谷 睦美 | コンニャクグルコマンナンを素材とする化学実験教材の開発
概要:日本において日常的に食べられているコンニャクについて,そのゲル化のメカニズムを学ぶことができる実験教材を開発した。コンニャクのゲル化にはpHおよび陽イオンの種類が関わっていることが分かっており,異なる条件で作成したコンニャクの強度を測定することでゲル化のメカニズムを定量的に考察することができる。当研究室で以前から用いられてきたヒドロキサム酸鉄(�V)法にてエステルを検出することで,コンニャクのゲル化にはエステル結合が関与していることも確認できた。 |
| 木村 敬嘉 | メチレンブルー類似体を用いたフォトクロミック系の拡張
概要:1.0 mmol L-1メチレンブルー(以下,MB+)水溶液と0.20 mol L-1アスコルビン酸(以下,AsA)水溶液を1:2の体積比で混合すると,MB+が還元されてロイコメチレンブルー(以下,LMB)が生成し溶液が青色から無色へ変化する。この溶液に405 nmの青紫光を照射すると溶存酸素によってLMBが酸化され,青色に戻ることが報告されている。LMBの405 nmにおける光の吸収はわずかであるが,光照射によって酸化反応が進行し着色と脱色を100回以上繰り返すことができる。しかし先行研究において用いられた色素はMB+のみであり,類似化合物についての研究はされていない。本研究ではMB+類似化合物としてメチレングリーン MG+を使用し,MB+と同様に,AsAによる脱色と光の照射による発色が起こるかを検討する。 |
| 白倉 雅時 | 可視光とメチレンブルーおよびアミンを用いた有機化学反応
概要:これまでに報告されている高等学校化学の光化学反応に関する実験教材の多くは,溶液の色や蛍光など視覚的な変化の観察を主眼とし,色の変化と匂いの変化を併せ持つ光化学反応系を教材化した例は調べた限り見つからなかった。当研究室では,これまでにメチレンブルー MBとアスコルビン酸を用いた可逆的な光化学反応を報告しており,色の変化をともなうMBの酸化還元サイクルを,可視光を用いて容易に観察できる。本研究はこのサイクルをアミンの酸化に応用し,色の変化と匂いの変化をともなう新規な教材の開発を目的とする。さらに研究過程において新たに見出した蛍光性副生成物について,その構造および光物性を明らかにすることも目的とする。 |
| 藤田 温斗 | セルロースの化学的加工によるイオン交換材の作成と応用
概要:当研究室では過ヨウ素酸酸化とピニック酸化を用いてセルロースの性質を変化させることで,吸水性とイオン交換性をもつ材料をつくる実験教材の開発を行っていた。本研究ではセルロースの2位と3位を過ヨウ素酸酸化で切断した後,6位のヒドロキシ基間のアセタール化によって分子間を架橋する。さらにホルミル基をカルボキシ基に変換することで,水溶液に分散しにくいイオン交換体を作成する。またセルロースの吸水性を増減させたりイオン交換能を付与したりしながらものづくりを楽しめる,高大連携講座や科学クラブに向けた実験教材を開発する。 |
| 荒井 祐樹 | 硫酸水溶液の電気分解によるオゾン生成とオゾン分解実験教材の開発
概要:高等学校「化学」では無機化学分野において,オゾンの物性や化学的性質,発生法,検出法を,有機化学分野の発展において,オゾンによる酸化(オゾン分解)を学習する。本研究ではオゾン発生法のうち,オゾン発生量が多く簡易的な装置を用いて実験を行うことができるといった利点から,電気分解方式に着目した。この方式における先行研究では,ホフマン型電解装置や枝付試験管を用いた電気分解装置が開発されている。しかし,ホフマン型電解装置では装置が高価であること,冷却ができないことが課題であった。また枝付き試験管を用いる電気分解装置では,陰極から発生する水素と陽極から発生するオゾンなどを完全に分離することができないことや,ガラス管加工など装置の作製に手間を要すること,発生した気泡が電極と電解質水溶液を覆うことで,気体発生が不安定になること,電極間距離が短くショートする危険があることが課題であった。本研究では,前述のような課題を解決した電気分解装置を確立し,オゾン発生条件の最適化を行う。そして,オゾン分解を題材とした実験教材の開発に繋げる。 |
| 清水 翔 | シクロデキストリン包接体の包接状態に関する研究
概要:シクロデキストリン(以下,CD)はグルコースがα−1,4結合で環状に結合した物質であり,環状オリゴ糖とも呼ばれる。6,7,8個のグルコースが環状に繋がったものをそれぞれα,β,γ−CDと呼ぶ。CDの分子は「底のないバケツ」のような形をしており,外側は親水性,内側は疎水性を示す。当研究室ではネロール,ゲラニオール,シトロネロールを用いて,E/Z異性体の識別実験を開発・研究した。水溶液中でネロール,ゲラニオール,シトロネロールをα−CDに包接させると,その包接体は白色の沈殿となるが,その生成速度は基質によって大きく異なりネロールが最も早く,次いでシトロネロール,ゲラニオールの順になった。この研究において,ネロール包接体ではその多くが1分子のネロールに上下から2分子のα−CDが向かい合って包接されており(HH 構造),ゲラニオール包接体,シトロネロール包接体では1分子のゲストに対してそれぞれ1.36,1.67分子のα−CDが包接されており,α−CDどうしが向かい合ったHH構造と,同じ方向を向いて並ぶHT構造が混在していることが報告された。各包接体の沈殿生成速度と包接構造との関係性を比較すると,以下の2点が予想される。
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| 清水 唯花 | 還元剤およびpHがメチレンブルーの光応答性に与える影響
概要:ブルーボトル反応は,メチレンブルー(以下,MB+)を用いる代表的な化学反応である。一般的なブルーボトル反応では,溶液を振とうすると溶存酸素によって無色のロイコメチレンブルー(以下,LMB)が酸化され,青色のMB+が生成する。一方,この溶液に光を照射しても,発色は起こらない。これに対して,還元剤としてアスコルビン酸(以下,AsA)を用いた系では,振とうによる発色はほとんど起こらないものの,近紫外光や青紫色光を照射することで,無色の溶液が青色に発色することが報告されている。ブルーボトル反応は,化学の初学者にも広く知られている反応であるにもかかわらず,LMBの光吸収に関与する電子遷移が帰属されていないことは注目すべき点である。そこで本研究では,以下の2点を研究目的とした。
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| 原 涼真 | 亜鉛めっきの改良と解析
概要:「錬金術師の夢」実験とは銅板表面に亜鉛をめっきした後,加熱により黄銅めっきへと誘導する実験である。この実験では銅板が銀色,金色へと変化する様子が観察できる。この変化について,かつて錬金術師たちが卑金属から貴金属を生み出そうと夢見ていたことにちなみ,「錬金術師の夢」実験と名付けられている。従来法では強塩基性条件や強酸条件,発火の危険性がある亜鉛粉末を用いる必要があり,安全上の課題があった。そこで界面活性剤を加えた塩化亜鉛水溶液とアルミホイルを用いる方法が開発され,従来法と比較して安全に実験を行うことができるようになった。なお,この方法では塩化亜鉛の販売会社によってめっき速度に違いがあることが定性的に確認された。本研究では,販売会社の異なる塩化亜鉛を用いた場合のめっき速度の違いを定量的に調べ,そのめっき反応を促進または阻害している原因の特定を目的とする。これにより,効率的にめっき反応を進行させる条件を明らかにすることを目指す。 |
| 加藤 夏帆 | ヨウ素を用いた芳香族アルコールの酸化
概要:高等学校化学では,第一級アルコールが酸化されアルデヒドを経由してカルボン酸が生成されることを学ぶ。現教育課程の教科書に記載されているアルコールの酸化反応では,二クロム酸カリウムを用いたエタノールの酸化,銅を用いたメタノールの酸化が例として挙げられている。しかし,前者では劇物に分類される二クロム酸カリウムを取り扱う必要があり,後者では強い毒性を有するホルムアルデヒドが生成する。その一方で,比較的安全に取り扱うことができる芳香族アルデヒドについては,その酸化挙動を扱う実験教材が現行教科書に示されていない。一般に,第一級アルコールのアルデヒドへの酸化では反応がさらに進行してカルボン酸まで酸化される例が多く,アルデヒドで停止させるための反応の制御が課題として存在する。そこで本研究では,低毒性で取り扱いが容易な酸化剤としてヨウ素に着目し,芳香族第一級アルコールをアルデヒドに変換する実験教材の開発を目的とした。 |
| 松本 航輝 | 糖類の還元性の原因となる構造の究明
概要:現在,高等学校「化学」の教科書には糖類が還元性をもつ理由について「鎖状構造においてホルミル基を持つため」と記載されているものが多い。当研究室の過去の研究では,様々な糖類の還元性について2位の炭素原子に結合した官能基が糖類の還元性を大きく変化させることを報告した。本研究は,グルコースにおける2位のヒドロキシ基が別の置換基に置換された糖(例:グルコサミン,N−アセチルグルコサミンなど)を用いて,2位の官能基が還元性に与える影響を定量的に分析し,糖類の還元性の原因を究明する。 |