椎名 勇教授らの「マスト細胞腫の無限増殖に対するM-COPAの阻害効果」に関する研究成果を読売新聞などが紹介
本学 理学部第一部 応用化学科 椎名 勇 教授と生命医科学研究所 安部 良 教授、小幡 裕希 講師らの研究チームによる「難治性血液がん治療薬の合成とメカニズム解析に関する研究」が、読売新聞などで紹介されました。
本報道は、マスト細胞腫の主な原因であるKitチロシンキナーゼの活性化変異体の新たな阻害方法を解明し、薬理活性評価と併せて発表した学術論文に関するものです。安部研究室では、白血病の一種であるマスト細胞腫の無限増殖の顕著な抑制効果と、その詳細なメカニズムを明らかにし、Kit変異体の異常な細胞内局在をターゲットとした、がん細胞の増殖を抑える新たな戦術を見出しました。
椎名研究室で全合成に成功した細胞内輸送阻害剤M-COPA(2-メチルコプロフィリンアミド[AMF-26])及びその誘導体は現在、難治性胃がん(MET陽性胃がん)の治療薬として、研究開発が本学/がん研究会/エーザイ(株)/北里大学の産学連携で行われていますが、本研究成果によりM-COPA及びその誘導体が、予後不良であるイマチニブ抵抗型Kitを発現するマスト細胞腫を含む難治性血液がんに対しても治療薬候補となることが示されました。
この研究により、チロシンキナーゼ阻害剤やモノクローナル抗体薬とは異なる、チロシンキナーゼ変異陽性のがんの新たな治療アプローチとして、ゴルジ体阻害剤開発の加速化が期待されます。GIST(消化管間質腫瘍)や急性骨髄性白血病などのKit変異が原因の他のがんや、変異により耐性を獲得し、イマチニブ(商品名グリベック®)に耐性となった変異型がん腫へのM-COPAの適応も今後検討されます。
本研究成果の内容は2017年4月12日発行の米国Public Library of Science(PLOS)社の学術誌(PLOS ONE)に掲載されました。詳細については掲載紙面をご覧ください。
掲載紙
『日刊工業新聞』 2017年4月21日付『薬事日報』 2017年4月21日付
『日経産業新聞』 2017年4月26日付
『読売新聞』 2017年5月14日付(朝刊科学面)
プレスリリース: http://www.tus.ac.jp/today/201704130010.pdf
椎名研究室のページ
研究室のページ: http://www.rs.kagu.tus.ac.jp/shiina/indexj.html
大学公式ページ: http://www.tus.ac.jp/fac_grad/p/index.php?19ed
安部研究室のページ
研究室のページ: http://tus-ribsjm.clsv.jp/immunology/
大学公式ページ: http://www.ribs.tus.ac.jp/index.php/course/labforstu/abelab/
(関連情報)
■YouTubeによる公開
タイトル:東京理科大学椎名研究室・がん研究会分子薬理部 合同記者会見(2016年9月30日)
動画説明:難治性の胃がんに高い効果がある新物質「M-COPA」を同定(アニメーション入り一般向け解説版)
URL: http://https://www.youtube.com/watch?v=4yBaG8TrI70
タイトル:東京理科大学椎名研究室・がん研究会分子薬理部 合同記者会見(2013年5月13日)
動画説明:ゴルジ体を標的とする新しい抗がん剤の人工合成に成功
URL: http://https://www.youtube.com/watch?v=DMQE8qSJboI