研究室

応用化学科の研究室の特色

物理化学系の研究室では、機能性ナノ材料や生体材料の構造および機能発現のメカニズムを分子レベルで解明するとともに、新たな機能性材料の創製やさらに生命化学へ貢献する研究に取り組んでいます。無機化学系の研究室では、エネルギー・環境問題を解決するための物質の開発や先端光分析技術の開拓など、グリーンケミストリーに貢献する化学の研究を行っています。有機化学系の研究室では、光学活性化合物の合成を通じて生命の起源に迫る根源的な研究を展開するとともに、我々の生活を豊かで安全なものにするため画期的な新薬の開発や機能性有機材料の創製にも積極的に取り組んでいます。

構成研究室

物理化学

  • 鳥越研究室 鳥越 秀峰 教授

    生命現象の分子機構を解明し、創薬に役立てる

    生命の設計図は染色体上の遺伝子に書き込まれ、遺伝子から作られる蛋白質が生命現象で重要な役割を演じています。当研究室では、遺伝子の実体であるDNAや遺伝子から作られる蛋白質の立体構造や、DNAや蛋白質同士が結合する仕組みを解明しています。これを通じて、精緻に構築された生命現象の分子機構を解明すると共に、生命現象を必要に応じて人工的に制御する方法を創製し、創薬などに役立てることを目指しています。具体的には、1)癌化した遺伝子など働いてほしくない遺伝子の人工的制御、2)体質を左右する遺伝子の微細な構造の検出、3)テロメア結合蛋白質やテロメラーゼによる細胞の癌化老化機構の解明、を主に検討しています。

  • 大塚研究室 大塚 英典 教授

    界面科学を生かしたバイオ操作技術を目指して

    当研究室では合成材料と生体物質の界面におけるコロイド・界面化学的基礎物性の解明を基礎とし、化粧品、食品、医薬品などの分野で有効な技術を創出し、医療・環境応用に広く貢献することを目的としています。具体的には、生体物質からの多様な信号を的確に検知し、かつ増幅することの出来る「分子インターフェイス」機能を有する材料界面を創出することによって、環境浄化や病気の診断、失われた組織の再建を目指しています。さらに、大きさや形状の制御されたナノスケールの微粒子・分子コロイドを合成し、それらの生体認識機構を調べることによってガンをはじめとする難病の検出・イメージング、治療を目指しています。

  • 根岸研究室 根岸 雄一 教授

    機能をもった新しいナノ物質を創成する

    ナノテクノロジーは、機器やデバイスの小型化、高機能化、高分解能化、高効率化、省エネルギー化を実現し、それにより、材料、エネルギー、環境、情報通信、医療といった分野で多くの問題を解決すると期待されています。こうした技術を飛躍的に進展させる為に、ナノスケールの大きさをもつ高機能な物質の創製が切望されています。金属原子が数個から数百個集まった金属ナノクラスターは、そのような高機能ナノ物質として大きな注目を集めています。当研究室では、特異な物性や機能をもつ金属ナノクラスターを生み出すこと、そしてそれらを化学/光触媒や太陽電池などに応用することを目指し、研究を行っています。

  • 古海研究室 古海 誓一 教授

    プラスチックやナノ材料を駆使して、光を自在に操る

    光の世紀といわれる今世紀、光技術は目覚ましい発展を遂げ、発光ダイオード(LED)に代表されるように、光を発する、すなわち発光する材料や光源は、私達の日常生活に溢れています。特に、レーザーは、ある特定の波長を示す単一波長性、光が直線的に進行す る指向性などの特長を兼ね備えており、現在の産業・科学技術で広く活躍しています。私たちの研究室では、光と物質の相互作用を考究して、有機材料を用いた新しい光源、レーザーを創り出す研究を取り組んでいます。さらに、原子スケールの無機ナノ材料と有機材料を高度に融合することで、高効率な太陽電池や高輝度なディスプレイなど次世代の光技術に貢献できる新しい研究領域の開拓を目指しています。

  • 湯浅研究室 湯浅 順平 准教授

    光を利用した新しい機能性物質材料の開発を目指して

    有機、無機化合物の発光現象に着目した、新規発光性機能材料の開発に取り組んでいます。偏光性などの特殊な性質を持った光は一部の3Dディスプレイに利用されている他、次世代の光情報技術の基盤となることが期待されています。様々な有機、無機化合物を分子レベルでデザインすることで、このような特殊な性質を持った光を自発的に放つ発光材料の創成に取り組んでいます。さらに、これらの発光材料の偏光性を利用したセンサやセキュリティーについても研究を展開しています。

  • 無機化学

    • 工藤研究室 工藤 昭彦 教授

      水と太陽光からクリーンな水素を作る光触媒

      地球規模での資源・エネルギー・環境問題を根本的に解決する化学反応として、光触媒と太陽光を使った水分解によるソーラー水素製造が注目されています。この水の光分解反応では光エネルギーが化学エネルギーに変換されることから、人工光合成と呼ぶことができます。さらに、このソーラー水素と炭素源として二酸化炭素を用いることにより、さまざまな有用な有機物や、化学肥料に使われるアンモニアを合成することができます。本研究室では、この人工光合成の実現に向けて、水の光分解反応に高活性を示す粉末系半導体光触媒材料や光電極の開発を行っています。また、二酸化炭素を直接資源化する光触媒反応の研究も行っています。人工光合成の確立は化学者の大きな夢の一つであるとともに、社会的にも重要なテーマであります。

    • 駒場研究室 駒場 慎一 教授

      次世代エネルギー変換を目指して!

      21世紀の環境・エネルギー問題の解決に貢献すべく、効率的な化学・電気エネルギー変換系を目指した研究に取り組んでいます。近年、リチウムイオン電池が高性能二次電池として広く普及しました。その電極物質の合成法と充放電(酸化還元)反応の解析から、自動車バッテリーとして適用可能な高エネルギー特性を目指して、新規な二次電池や電気化学キャパシタの創製に取り組んでいます。さらに、電極のナノ構造を設計して、物質を選択的に検出する電気化学センサ、酵素反応を発電に利用するバイオ燃料電池などの応用研究へと展開しています。

    • 貞清研究室 貞清 正彰 講師

      ナノ空間を利用して新たな機能性材料を創出する

      ナノスケールの小さな細孔(空間)を有する多孔性固体を用いて、次世代のエネルギー・物質循環型社会に資する新たな機能性材料の開発に取り組んでいます。ナノ空間を有する多孔性固体は、様々な物質の分離・貯蔵・反応など、化学分野において重要な役割を担う材料です。当研究室では、固体中のナノ空間をデザインし、物質・イオン・電子の動きを自在に制御する技術を開発することにより、新しい機能性材料の開拓を行っています。具体的には、燃料電池・二次電池材料への応用を指向した新規な超イオン伝導体の開発や、電気エネルギーを用いて選択的に目的の化合物を生み出す電解合成触媒に関する研究を展開しています。

    有機化学

    • 椎名研究室 椎名 勇 教授

      天然有機化合物の不斉全合成

      当研究室では天然に存在する薬効成分の人工合成を行います。特に、これまで構築困難とされてきた化合物や、抗菌活性あるいは抗腫瘍活性などの生物活性を有する薬剤の立体選択的な合成研究を行います。一方で、有機分子を自在に作り出すためには効率的な物質変換技術の開発も必要不可欠です。当研究室では、天然分子の人工合成を効率的に達成するための手段として、新しい合成反応(および反応剤)の開発も併せて試みます。
      (1)不斉合成技術を用いる天然有機化合物の合成
      (2)不斉合成技術を用いる抗菌剤、抗がん剤の合成
      (3)三成分連結法を用いる難治性疾患治療薬の合成

    • 松田研究室 松田 学則 教授

      炭素̶金属結合を活かす化学でユニークな物質合成

      有機合成化学は、入手容易な小分子から様々な機能・物性を持つ高付加価値分子を作り出す手法を開発する研究分野です。私たちの暮らしを豊かにしてくれる物質の多くは、有機合成化学の進歩によってもたらされています。また、現代社会において見過ごすことのできない環境・資源・エネルギー問題の解決にも、有機合成化学の果たすべき役割はますます増大すると考えられます。当研究室では、ライフサイエンスからマテリアルサイエンスまで幅広い分野を対象として、有機合成化学に関する様々な課題に取り組んでいます。特に、有機金属化学の立場から新反応の開発、有用物質の創製を目指して研究を展開しています。

    • 川崎研究室 川崎 常臣 教授

      ストレッカーアミノ酸合成でホモキラリティーの起源を探る

      当研究室では、ストレッカーアミノ酸合成のキラル中間体のわずかなL型とD型のアンバランスが増大して、最終的には一方のアミノ酸のみが得られる現象を発見しました。この現象を用いてアミノ酸自身が自己複製・増殖する反応を世界で初めて明らかにしました。生命誕生前の地球上でアミノ酸は、「ストレッカー反応」によって生成したと考えられています(ユーリ・ミラーの実験)。有機合成化学を基盤として、ストレッカー反応に取り組み、エナンチオトピック面や同位体不斉など種々のキラル要因(不斉の起源)とアミノ酸ホモキラリティーとの関連を明らかにしていきます。有機合成化学の手法で、キラル分子を取り扱うキラル化学研究を展開します。

    • 福井研究室 福井 康佑 准教授

      種子の発芽を制御する物質の研究

      植物は移動ができないため、植物ホルモンと呼ばれる様々な有機化合物を作り出し、体の形や代謝を巧みに制御することで環境に適応しています。当研究室では、植物ホルモンの機能を制御する有機化合物を開発し利用することで、植物のカラダの中で起きている様々な現象を解き明かす研究を展開しています。また、それらの化学ツールを利用して革新的な植物の生産技術に結びつけていきます。