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椎名 勇教授及び村田 貴嗣助教の抗がん剤開発に関する研究課題が日本医療研究開発機構(AMED)令和 4 年度革新的がん医療実用化研究事業に採択~既存抗がん剤に"耐性を獲得したがん"を対象とする新しい治療法の開発に期待~

椎名 勇教授及び村田 貴嗣助教の抗がん剤開発に関する研究課題が日本医療研究開発機構(AMED)令和 4 年度革新的がん医療実用化研究事業に採択~既存抗がん剤に"耐性を獲得したがん"を対象とする新しい治療法の開発に期待~

【研究の要旨】
理学部第一部 応用化学科 椎名 勇 教授及び村田 貴嗣 助教は、新しく開発した立体選択的有機合成反応等を利用し、新薬候補物質を創出しました。本技術により、これまでの抗がん剤では治療継続が困難となった"耐性を獲得したがん"に対する新規作用メカニズムを有する抗腫瘍性薬剤の開発が可能となります。本研究課題は、国立研究開発法人 日本医療研究開発機構(AMED)令和 4 年度 革新的がん医療実用化研究事業*1 に 採択され、研究開発が一層加速するものと見込まれます。

【研究の背景】
椎名 勇 教授、村田 貴嗣 助教らは明確な医薬効果を発揮する薬剤である分子性化合物「タンザワ酸*2 類縁体」を創出しています。「タンザワ酸類縁体」は細胞増殖シグナル伝達を司るタンパク質の機能を制御する能力を有しており、がんの肥大化や転移を食い止める効果が期待できます。本学の研究者らは「タンザワ酸類縁体」を担がんマウスへ経口投与することで腫瘍の増殖抑制が観測される動物実験を成功させています。

【研究成果の概要】
本事業においては、本学の先進的な有機合成技術である不斉合成反応*3、超高速脱水縮合反応*4、ならびに立体選択的分子内[4π+4π]ペリ環状反応*5 を組み合わせることで、有効な活性を有するタンザワ酸類縁体を大量に合成し、これまでの抗がん剤で治療継続が不能となった"耐性を獲得したがん"に対する新規作用メカニズムを有する抗腫瘍性薬剤を開発します。非臨床研究試験のデザイン及び薬効薬理・薬物動態・安全性の化合物評価については、パートナー企業であるアクセリード社*6と共同で実施する計画です。

【今後の展望】
この技術を用いることで、従来の分子標的薬が効かなくなったがん疾患に対し、新たな治療戦術が提供可能となります。天然物質「タンザワ酸」とその類縁体の活用は、分子標的薬、抗体医薬に続く、がんへの対抗手段の第 3 の選択肢の樹立に繋がると考えています。

*1:日本医療研究開発機構(AMED)公募情報:(令和 4年 3 月 22 日付)
https://www.amed.go.jp/koubo/15/01/1501C_00038.html
公募説明会資料:
令和 4 年度 「革新的がん医療実用化研究事業」に係る公募(一次公募)
https://www.amed.go.jp/content/000088817.pdf

*2:タンザワ酸
1997 年、上村 大輔 教授(静岡大学:当時)らが神奈川県丹沢山エリアで最初に発見した有機化合物

*3:不斉合成反応
構造が鏡像の関係にある 2 つの有機化合物を作り分ける技術

*4:超高速脱水縮合反応
2002 年、東京理科大学 椎名研究室で開発された技術(全世界で 13,000 件以上の利用件数 が報告されている。) https://www.rs.kagu.tus.ac.jp/shiina/indexj.html

*5:立体選択的分子内[4π+4π]ペリ環状反応
分子内[4π+2π]ペリ環状反応(Intramolecular Diels−Alder 反応)を[4π+4π]系に拡張した反応

*6:アクセリード株式会社
代表取締役社長 藤澤 朋行
設立 2020 年 4 月
Axcelead Drug Discovery Partners 株式会社(ADDP 社)の持株会社ADDP 社は、2017 年 7 月に武田薬品工業株式会社の創薬プラットフォーム事業をスピンア ウトして設立された国内初の創薬ソリューションプロバイダーです。
https://www.axcelead.com/news/20200401.html

■椎名研究室のページ
研究室のページ: https://www.rs.kagu.tus.ac.jp/shiina/indexj.html
椎名教授のページ: https://www.tus.ac.jp/academics/teacher/p/index.php?19ed"
村田助教のページ: https://www.tus.ac.jp/academics/teacher/p/index.php?721F"