Na系層状酸化物にはO3構造やP2構造と呼ばれる結晶構造をとるNaxCoO2や、Na2/3Ni1/3Mn2/3O2が
知られており、それぞれ結晶構造や電気化学特性が研究されています。
さらにNa系層状酸化物には六方晶(hexagonal)型と直方晶(orthorhombic)型と呼ばれる結晶多形をとる
P2-Na
2/3MnO
2が知られており、それぞれ結晶構造や電気化学特性が研究されています。
当研究室では、地殻中の存在量が豊富なFeを用いた正極材料として、O3 構造のNaFe
1/2Co
1/2O
2 やP2 構造の
Na
2/3Fe
1/2Mn
1/2O
2がNa
+の脱挿入により高い作動電圧や容量を示すことを見出しました。
P2-Na
2/3Fe
1/2Mn
1/2O
2はLiイオン電池に匹敵する190 mAh g
-1の可逆容量を示します。
また当研究室では地殻中の存在量が豊富なMnを用いた正極材料のP2-Na
2/3Ni
1/3Mn
2/3O
2に対してTiやAlを微量ドープすることにより高いエネルギー密度を維持しつつ長寿命化を達成しました。P2-Na
2/3Ni
1/3Mn
1/2Ti
1/6O
2は3.7Vの高い作動電圧を示します。
現在、新規正極材料の探索に加え、長寿命化に向けて構造解析を用いた劣化原因の究明と改善手法の設計も積極的に行っています。
負極材料としてハードカーボンを用いることで、Naイオンを電気化学的に脱挿入できることが知られています。我々は
ハードカーボン負極のNa吸蔵機構や界面構造に着目して解析を行っています。
ハードカーボン負極はサイクル特性が短いという課題を抱えていましたが、電解液に添加剤FECを適量加えることでサイ
クル特性が向上することを発見しました。
ハードカーボン負極のサイクル特性を改善するために、結着剤(バインダー)にも着目しました。従来のポリフッ化ビニリデ
ン(PVdF)に替えてカルボキシメチルセルロース(CMC)を用いることで、サイクル特性を大きく向上させることに成功しました。